研究実績の概要 |
遺伝子発現の本質を理解するためには、RNAポリメラーゼホロ酵素が単独で認識できる[Constitutive promoter]と、認識に何らかの補助因子が必要な[Inducible promoter]を区別して同定する必要がある。本研究では、ゲノム転写制御機構の全体像を理解するために、一つの生物としては個々の遺伝子情報が最も蓄積している大腸菌をモデル生物として、Genomic SELEX法(gSELEX法)によって、大腸菌の全7種類のシグマ因子のConstitutive promoterの決定を目指して実施された。 これまでに全シグマ因子とRNAポリメラーゼコア酵素を精製し、それぞれのホロ酵素を形成させてgSELEX法による解析を行い、ゲノム上の結合領域の同定を試みた。その結果、RpoD, RpoN, RpoS, RpoH, RpoF, RpoEについては、それぞれの既知標的のプロモーターを含むゲノム上の標的領域を同定する事に成功した。また、その結果から各シグマ因子のプロモーターリストを作成した。そのうち、RpoD, RpoS, RpoH, RpoF, RpoEについては、ゲノム制御機構および新規な役割を議論し、学術論文として公開・発表してきた。RpoNに関してはConstitutive promoterの同定には成功した一方で、転写の開始にはEnhancerと呼ばれるATP加水分解をエネルギーとした補助因子が必要である事が報告されている。そのため、RpoNのゲノム転写制御を理解するためには、Enhancer因子群との関連性についてのさらなる研究が必要である事が示唆された。
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