研究課題/領域番号 |
16K07196
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀家 慎一 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (40448311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クロマチン / ノンコーディングRNA / 核マトリクス / エピジェネティクス / インプリンティング / ncRNA |
研究実績の概要 |
これまでの研究で,親由来の明らかなヒト15番染色体を1本保持したマウスニューロン様細胞株F12を樹立し,15q11-q13領域のゲノムインプリンティング制御メカニズムの解明に取り組んできた。ゲノムインプリンティングと反復配列の関連は,数多くの論文で報告されており,15q11-q13領域に関してはLINE1配列がDNAストランド特異的高密度分布をとることが見出されている。そこで,このLINE1配列のストランド特異的高密度分布を示す領域のBACをプローブにDNA-FISH解析を行った結果,神経細胞でのみ父片アレル特異的にクロマチンが大きく広がった脱凝集構造をとることを明らかにした。興味深いことに,クロマチン脱凝集を呈する領域は,LINE1の特徴的分布を示す領域と完全に一致する。また,LINE1配列のストランド特異的高密度分布を示す領域内のMAR(PWS-IC)を欠失させると,本来凝集している母方アレルにおいてもクロマチン脱凝集構造が出現するなど,LINE1配列がMARを介した染色体ドメインレベルのクロマチン構造形成に寄与している可能性が示唆される。そこで,本年はLINE1配列に結合するSATB1というMAR結合タンパク質やSAF-AやhnRNPUに着目し,その欠損細胞株並びに過剰発現細胞株を樹立し,15q11-q13領域のクロマチン脱凝集と遺伝子発現がどのように変化するか明らかにしようと考えた。その結果,SATB1の発現量と15q11-q13領域のクロマチン脱凝集の程度に正の相関があることが明らかになり,LINE1 RNAが細胞核内の足場(核マトリクス)として機能することでゲノムを三次元的に組織化し,染色体ドメインレベルの遺伝子発現制御に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9システムを用いて,MAR結合タンパク質であるSATB1やSAF-A,hnRNPUの欠損細胞株を樹立し,一方で,SATB1,SAF-A,hnRNPUが過剰発現している細胞株も同様に作成した。その結果,SATB1の発現量と15q11-q13領域のクロマチン脱凝集の程度に正の相関があることが明らかになり,LINE1 RNAが細胞核内の足場(核マトリクス)として機能することでゲノムを三次元的に組織化し,染色体ドメインレベルの遺伝子発現制御に寄与している可能性が大きく示唆され,今後の研究の進展が期待されたから。
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今後の研究の推進方策 |
前年度,解析したクロマチン脱凝集領域とLINE1 RNAの共局在を再確認する。具体的には,LINE1をプローブにしたRNA-FISHとクロマチン脱凝集を呈する領域のBACをプローブにDNA-FISHを一緒に行う。また,母方のクロマチン凝集を呈する領域についてもLINE1 RNAとどのような位置関係にあるのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は,概ね順調に進み,計画通りに進んでいるが,年度末キャンペーン等で,若干,試薬購入にかかる費用に端数が生じた。来年度も計画通りに研究を進める予定である。
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