研究課題/領域番号 |
16K07200
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
守口 和基 広島大学, 理学研究科, 講師 (30294523)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生物界間接合 / 遺伝子導入法の開発 / 四型分泌系 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果から、予定通りA)-C)のテーマの中から「 A) 大腸菌-出芽酵母のモデル生物界間接合系を用いた高/低接合効率大腸菌変異株スクリーニング系の開発とKeio コレクションを使ったスクリーニング」に注力した。 大腸菌のゲノム網羅的ノックアウトライブラリーであるKeio コレクション全ての株に生物界間接合用のベクター及びヘルパープラスミドを導入した、生物界間接合用ドナーライブラリー(約4000株)を用い、1stスクリーニングを実施し、完了した。接合効率上昇変異株より低下変異株の方が多いことが推測され、酵母側の生物界間接合変異株を調べた我々の先行研究の結果(上昇変異株と低下変異株はほぼ同等に存在し、中立的である)と異なることが示唆されている。 生物界間接合用ドナーライブラリーを用い、大腸菌間の接合効率変異株についてもゲノム網羅的スクリーニングに挑戦した。1stスクリーニングの50%を終了している。詳しい解析は未だ行なっていないが、大腸菌間の接合においても接合効率上昇変異ドナー株より低下変異ドナー株の方が多いことが推察された。 大腸菌から接合伝播によりイネ培養細胞へベクターを導入できないかを探る中で、大腸菌が産生する新規エリシター候補を得た。この原因遺伝子のKO株はイネ培養細胞に対する細胞毒性は低下するものの、なおアグロバクテリアより毒性は高く、他にも遺伝子導入の障害の一因となっている物質があるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難関であったゲノム網羅的ライブラリーの作成とそれを用いた1stスクリーニングをそれぞれ1年目、2年目に計画通り終えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は応用面での有用性が期待される生物界間接合効率上昇変異株のスクリーニングを完了し、原因遺伝子を確定したい。基礎生物学的な視点では、大腸菌の野生株コレクションであるECORコレクション(72株)を用いて生物界間接合効率の高い株をスクリーニングし、我々が確定する予定の原因遺伝子への変異の有無を確認し、自然界における真核生物への遺伝子水平伝播の潜在性を再評価する。応用生物学的な視点では、汎用実験株へ生物界間接合効率上昇変異を導入し、より実用性と適用範囲の広い生物界間接合系を構築する。 余力があれば大腸菌が産生するエリシター物質の解析を継続し、アグロバクテリアではどのように植物側の防御応答をすり抜けているのかを明らかにし、大腸菌から植物細胞への生物界間接合による遺伝子導入系の実現へ向けての基礎データとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 卒業研究生が想定より多く配属されたため、予定していたアルバイトの雇用を行わなかったため。実体顕微鏡とコロニーの自動カウントを行うソフトの購入を計画していたが、試用してみると想定していた性能に達していなかったため、購入を見送ったため。 (使用計画) H30年度は博士課程学生1名との研究体制で、アルバイトの雇用が必須であるため、雇用費用に充てる。また、ECORコレクションから生物界間接合高効率株が見つかった場合のゲノム解析費用に充てる。さらに残額があれば生物界間接合の適用範囲を拡げるために海外の研究者との共同研究を行うための費用に充てたい。候補として生物界間接合で珪藻への遺伝子導入に成功したグループとの連携を考えている。
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