昨年度に引き続き、想定テーマA)「大腸菌―出芽酵母のモデル生物界間接合系を用いた高/低接合効率大腸菌変異株スクリーニング系の開発とKeio コレクションを使ったスクリーニング」に注力した。 接合効率上昇株については、野生株に比べ接合効率が一桁程度上昇する変異株が得られており、その中の3変異株について接合関連遺伝子(traJ)プロモーターの活性を調べてみた。その結果、活性の上昇は観察されなかったことから、これらの変異体の接合効率の上昇は、接合関連遺伝子の発現上昇によってもたらされるのではないことが示唆された。また、これら3変異株は、大腸菌間の接合効率も上昇しており、3遺伝子は大腸菌―出芽酵母間の接着効率ではなく、供与大腸菌内でプラスミドを送り出す過程に阻害的に機能していることが示唆された。 接合効率低下株については、昨年度実施した1stスクリーニングからさらにスクリーニングを進めた。選抜効率が悪く、さらに5ラウンドのスクリーニングを要したが、81株の接合効率低下株が得られた。この中の12株は、大腸菌間の接合効率の低下も同様に観察されたが、69株は限定的な低下に留まったことから、これらの原因遺伝子が、大腸菌―出芽酵母間の接着を促進的に機能することが示唆された。 派生テーマとして、IncP型プラスミドの受容効率が低下した大腸菌変異体をゲノムワイドにスクリーニングした。その結果、生細胞含有率が低い、選抜に用いた抗生物質に対する感受性が高まる等の理由による見かけの接合体数の低下が観察される変異体は見つかったが、接合効率そのものが低下した変異体は見出されなかった。よって接合そのものを受容菌側から抑止することは難しいことが示唆された。
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