昨年度までに得られた結果として、ゲノム中の移動性遺伝子の可能性のある遺伝子群について「トーゴーの日シンポジウム2018」で発表した。今年度の目標として、従来16S rRNA塩基配列に基づく系統解析によって細菌叢の比較をしていたものを、短い連続塩基(5~6塩基)の配列出現頻度を比較することで予測することとした。予測にはサポートベクターマシン(SVM)や深層学習(Deep learning)といった手法を用い、予測の対象は口臭とすることにした。16S rRNA塩基配列による分類で口臭が予測でき、且つ、短い連続塩基配列が菌叢の構成を反映しているのであるならば(これはすでに本研究課題によって十分示されている)、口腔内細菌叢由来のゲノム中における連続塩基配列の出現パターンによって口臭の有無が予測できるはずである。しかし、まず 16S rRNA塩基配列に基づいて口臭の予測ができなければならないので、そこをまず確実なものとするために、口臭のある者45名、口臭のない者45名より唾液を採取し、16S rRNA遺伝子の配列に基づく集計(OTUのみの集計で菌種の推定は行っていない)をSVMと深層学習で学習させ、学習に用いなかったサンプルのOTU構成から口臭の有無を予測したところ、SVMでは79%、深層学習では97%の精度で口臭の有無が予測できた。この内容を、BMC Oral Health誌に投稿し掲載されると、同誌のHighlights of 2018の一つに選ばれた。 その後、5塩基連続配列の出現頻度に基づき、口臭の有無の予測が可能かどうか検討しているところである。本研究の予算期間内に間に合わなかったが、近々成果を発表する予定である。
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