研究課題/領域番号 |
16K07213
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
渡邊 良久 静岡県立大学, 薬学部, 客員共同研究員 (00362187)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | エピゲノム / 神経可塑性 / 染色体バンド構造 |
研究実績の概要 |
我々のグループが開発した新規エピゲノム解析法をもとに、各種神経系由来のヒト細胞系列を対象に、体系的なDNA複製タイミングの解析を行い、染色体バンド境界部位を塩基配列レベルでゲノム網羅的に特定し、各細胞ごとに染色体バンド境界地図を作成した。その染色体バンド境界地図の比較解析により、ヒト染色体の構造的クロマチン境界と考えられる染色体バンド境界領域には、神経シナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群が集中して局在することを再検証することができた。また、染色体構造とゲノム配列の統合を目指した研究から、極端に長いシナプス関連遺伝子群や脳神経疾患遺伝子群が局在するバンド境界の位置は、塩基配列レベルでエピジェネティクに変移することが判明し、記憶の可塑性の分子基盤と関連していることが示唆された。 結論として、ヒト染色体のバンド境界領域の特殊な構造環境は、神経シナプス機能と密接に関連した神経可塑性の分子基盤や脳神経疾患の発症メカニズムと密接に関連した特殊な生物学的機能を併せもつ重要な染色体機能領域であることを実証することができた。また、染色体バンド境界の持つ特殊事情の解明により、ヒト染色体バンド境界に関する分子レベルでの医学的な解析は、脳神経疾患の病因の分子機構を知る手がかりを与えるだけでなく、あらたな脳神経疾患と関連した病因遺伝子を能率的に探索する方法としても発展する可能性があることが示唆された。これまでの一連の研究成果については、分担著書として発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、染色体バンド境界領域の特殊な構造環境は、神経シナプス機能と関連した神経可塑性の遺伝学的な分子基盤と密接に関連する重要な染色体機能領域であることが実証され、記憶ダイナミズムの分子基盤とも関連していることが示唆されたことが主な理由である。 また、染色体バンド境界の持つ特殊事情の解明により、ヒト染色体バンド境界に関する分子レベルでの医学的な解析は、脳神経疾患の病因の分子機構を知る手がかりを与えるだけでなく、あらたな脳神経疾患と関連した病因遺伝子を能率的に探索する方法としても発展する可能性があることを検証することができたことも理由としてあげられる。さらに、これまでの一連の研究成果を分担著書として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに、さらに高精度のヒト染色体バンド境界地図を再構築して、ゲノム網羅的に特定したバンド境界領域に共通する塩基配列を抽出し、境界を特徴づけるシグナル群が存在するかを明らかにする。 また、あらたに脳神経疾患と関連した病因遺伝子を能率的に探索する方法の開発に関する研究についても進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種のエピケノム情報データベースなどを積極的に活用して、包括的なゲノム・エピゲノム情報解析を行い、さらに高精度のエピゲノム比較解析を進めるように研究計画を変更したことが主な理由である。 今後の計画として、さらに高精度のエピゲノム比較解析を進めるとともに、あらたな脳神経疾患と関連した病因遺伝子を能率的に探索する方法の開発に関する研究についても進めていく予定である。
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