研究実績の概要 |
2000年~2008年に国立がん研究センター中央病院にて進行肺腺がん症例と診断され、白金製剤を含む2剤併用療法を受けた530例を選別した。さらに本研究では初診で進行肺腺がんと診断された439例の内、病理診断のために採取されかつ余剰生検試料が得られた183例を選択し、ホルマリン固定パラフィン包埋検体からのDNA抽出を行った。そのうち、 Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を行うために必要なDNA量(10ng)が確保できなかった91例を解析から除外した。92例についてCancer panelを実施し、シーケンスクオリティスコアであるQ20が0.9以上で、平均depth量が1000を越えた51例について、クオリティーコントロールをパスした症例として、本研究の解析対象とした。 次に51症例で認められた遺伝子変異の意義付けを行う前に、まず遺伝子多型ではないことを確認するため、東北メディカルバンクに登録されている3,552例の健常群において、5%以上で認められたバリアントを除外した。さらにClinVarでlikely pathogenic もしくは pathogenic mutationとして登録されているか、またOncoKBでoncogenic mutationと登録されている遺伝子変異のみを抽出し、これらを病的意義のある変異とした。さらに解析対象となる症例を治療応答群(治療により腫瘍が30%以上縮小した)と不応答群(それ以外)の二群に分けて関連解析を実施したが、有意な遺伝子変異は同定されなかった。今後さらに症例数を増やすために、外科的手術を受けた後に再発を来した91例を解析対象とすると共に、公開データベースなどを活用することで、治療応答群にかかわる遺伝子異常の有無をさらに検討する予定である。
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