研究課題/領域番号 |
16K07227
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
高木 善弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 主任技術研究員 (10399561)
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研究分担者 |
生田 哲朗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術研究員 (80584846)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共生 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、その実態を掴む事が出来ていない化学合成共生系における共生機構の構築、維持メカニズムに対して、これまでとは異なるアプローチで取り組むことである。共生系メカニズムには、エピジェネティクス的な制御が関わっているという仮定のもと、共生細菌ゲノムのメチロームを明らかにし、エピジェネティクス的な制御を探索することである。 初年度は、共生細菌ゲノムのメチローム解析とトランスクリプトーム解析の情報取得のためのシーケンシングを計画した。メタン酸化細菌を共生させる2種類のシンカイヒバリガイ(シンカイヒバリガイとヘイトウシンカイヒバリガイ)のエラ組織から、共生細菌ゲノムが高分子(20Kb以上)でかつ濃縮される方法について検討し、DNAを調整した。メチロームプロファイルを得るために、一分子シーケンサーPacBio RSIIにてシーケンスを実施し、約10万リード、総塩基数1.3Gbのシーケンスを取得した。 一方、両シンカイヒバリガイのエラ組織における宿主及び共生細菌を対象としたデュアルトランスクリプトーム解析を実施した。現場RNA保存処理したシンカイヒバリガイ類の鰓組織から全RNAを抽出し、Illumina社Ribo-Zero rRNA Removal kitを使用し、宿主および共生細菌のリボソーマルRNA除去後、ライブラリーを作製し、Ion Torrent systemにてシーケンシングを実施した。取得した約2千万 RNA-seqリード内、宿主リボソーマルRNAが約半数程度、除去されずに残っていたのに対して共生細菌リボソーマルRNAはほとんど検出されず、効率良く除去されていることが確認された。その他、共生細菌由来のリードは全体の5-10%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、2種類(DNAとRNA)のシーケンシングデーターを取得することが最も重要な課題であり、サンプルからDNAあるいはRNAを、状態の良く(自己分解が少ない)、高収率よく、取得するための抽出方法を確立することが重要である。しかしながら、シンカイヒバリガイのように、深海に生息する生物の飼育方法は、未だに確立されていないため、サンプリングの機会も限られた中、抽出方法の条件検討のための時間を予想以上に費やした。そのため、当初の計画よりやや遅れている。しかしながら、PacBio RSIIシーケンシングに必要な数マイクログラム以上の高分子DNAを取得し、PacBioのカタログスペックに見合うデーター量が取得できるライブラリーの作成に成功した。 一方、シンカイヒバリガイ共生系のデュアルトランスクリプトーム解析においても、現場環境での遺伝子発現を固定するため、我々は現場での生物固定を実施した。その結果、抽出されたRNAのBioanalyzerによる電気泳動解析からリボソーマルRNA由来のピークが確認され、RNA-Seqライブラリー作製が可能なRNAであることが確認された。しかしながら、予想外に宿主リボソーマルRNAの除去率が低く、さらに共生細菌由来のmRNA量も低かったため、目標リード数に達していないため、さらなるシーケンス追加が必要である。これについても、数日間のシーケンスをする時間を要するのみであるため、必要データ量を取得する事が出来る。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、平成28年度までに共生細菌ゲノムのメチロームプロファイルを作成する計画については達成できていないが、すでに解析に必要なプログラムのインストール等の情報環境の整備は完了しているので、早急にメチロームプロファイルを作成することで、遅れを十分に取り戻せると考えている。そして、シンカイヒバリガイ類共生細菌の異種間比較により「共生細菌ゲノムに特異的なDNAメチル化領域」を明らかにする。見出された共生系特異的候補パターンが、自由生活型細菌において非メチル化されているのかを検証するため、研究代表者が集積培養に成功した共生細菌に近縁なメタン酸化細菌のメチロームおよびトランスクリプトーム解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シーケンスライブラリーの作成に予想以上に時間を要したため、予定していたシーケンスを実施しなかったため、その試薬費用として未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
追加シーケンスのための試薬費用として使用する。
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