研究課題
本研究は,絶滅危惧種アカウミガメの孵卵時の基質(砂)の粒径や温度が,孵化幼体のフレンジーの発現に与える影響を明らかにし,合わせて幼体保管時の条件を変える事でフレンジーの持続時間がどう変化するのかを調べた.それら結果をふまえ,幼体のフレンジー効果を高める,適切な卵と幼体の管理方法を提案し,全国のウミガメ保護活動の技術向上に結び付けることを目的とした.(卵と幼体の管理方法の提案) 人工環境下で孵卵温度を変化させることは,幼体の性決定に影響を与え(高温で雌,低温で雄を産生),孵卵期間の長さを変えて体サイズに影響を与えるほか,脱出後の幼体に対して自然下経験するはずの無かった海水温を経験させることになる.本研究から,遊泳水温が泳力に影響することに加え,孵卵温度変化が間接的に幼体の生存率に影響することが示唆された.このようなことから,人工環境下におけるウミガメ卵の管理は本種の個体群構造を人為的に攪乱させる可能性があり,その保全は原則として自然孵化によるべきであると考える.しかしながら,やむを得ない事情から卵を保護し,孵卵,育成する場合は,孵卵基質である砂の粒径を小さくし,孵卵温度は低温として大きく生まれた幼体に早期から初期餌料を与えて育てることで,放流後の生存率がより高まると考えられる.また,孵化幼体を保持する場合は,海水中には収容せず,湿度を保持した空気中で保管することが好ましい.これらの管理方法により,絶滅危惧種の資源回復に寄与しうると考えられる.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件)
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