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2017 年度 実施状況報告書

ベトナム中部がツバキ属植物の新たな起源地か?その遺伝的多様性評価と保全

研究課題

研究課題/領域番号 16K07239
研究機関大阪市立大学

研究代表者

植松 千代美  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30232789)

研究分担者 片山 寛則  神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50294202)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードツバキ属植物 / 遺伝的多様性
研究実績の概要

2016年度までにベトナム全土で採集したツバキ属植物は4亜属17節59種(未同定の16種を含む)の84集団577個体で、Cheng & Bartholomew (1984)が中国を中心に記載した4亜属20節と比較しても多様である。2017年度はベトナム全土から採集した59種について形態形質の評価を、また中南部の34種についてDNAマーカーを用いた評価を行った。花の直径はC. gibertiの1.3cm からC. krempfiiやC. pleurocarpaの11.9cm 、葉身長はC.sp24(未同定)の4.7cm からC. cattienensisの40.7cm、葉身幅はC.sp24の1.5cm からC. hamyenensisの15.7cm まで幅広い多様性を示した。花色も白、ピンク、赤、紫、黄色と多様だった。
一方中南部の 332個体についてSSR解析を試みた。チャで開発されたマーカーからツバキ属の染色体基本数n=15に等しい15連鎖群に対応する15マーカーを用いた。ところでツバキ属植物では2倍体から8倍体まで様々な倍数性や種内倍数性が報告されている。フラグメント解析の結果2倍体の他3から8倍体の存在が示唆され、18種で種内倍数性が観察され、集団の遺伝構造の複雑さが予想された。
この知見に基づき2倍体と判定した個体のみを用いて系統樹を作成したところ、亜属あるいは節単位が一つのクレードにまとまらず、従来の形態分類を反映していなかった。ブートストラップ値も低く、今回用いたSSRマーカーはツバキ属の種間関係を推定するには適さなかった。ただし同種の複数集団については適用可能と考えられた。
遺伝的多様性の評価のためには高次倍数性出現のメカニズム解明と、倍数性種を含む場合の評価方法検討が新たな課題である。これは倍数性種を含む他の分類群にも共通する重要で興味深い問題と考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

葉と花の形態調査は採集全個体について、また中南部から採集した個体については予定していた15のSSRマーカーでの増幅、解析を終了することができた。
集団の遺伝構造を解析し、急ぎ保全の必要な集団を明らかにするためにSSRマーカーを用いたが、今回用いたマーカーは解像度が高すぎて必ずしも適当ではなかった。またSSRマーカーで解析できるのは基本的に2倍体種であり、予想外に倍数体種が多かったことから、適用できる種と集団が限られてしまうと言う問題が生じた。
中南部の個体を用いて、これらの問題点が存在することを明らかにできた点は成果であるが、当初の目的である集団の遺伝的多様性の評価と、起源地の推定を達成するためには、マーカーや解析方法の検討が必要と考える。この問題の解決方法を検討した上で、北部の個体についてもDNA抽出と解析を進めたい。

今後の研究の推進方策

本研究では形態形質と分子マーカーを用いて、①ベトナムのツバキ属植物の多様性を評価し、②相互の系統関係を明らかにし、③多様性の中心がベトナム北部か中南部かを明らかにすることを目指す。また④緊急に保全の必要な単位(集団)を選定し、⑤in situならびにex situでの保全を図ることを目指している。
これまでに葉と花の形態調査と計測は終了しており、得られたデータに基づいて主成分分析を行い、各分類群(亜属や節、集団)を特徴づける形質を明らかにする。自生地の地形・地質や気象の条件と形態的特徴の関係を検討し、ツバキ属植物における形態形質の進化要因を考察する。
分子マーカーを用いた遺伝的多様性の評価については前述の通り、調査種の半数以上にのぼる倍数体種の存在や種内倍数性が、SSR解析の適用を妨げる問題点として浮上してきた。そこで次のアプローチでこの問題の解決を試みる。(1)ベトナムのツバキ属植物については倍数性未同定の種が多いことから、フローサイトメーターを用いて核DNA量を測定し、倍数性を判定する。(2)核SSRマーカーに代わるものとして葉緑体DNAのSSRマーカーやホットスポット領域を用いて集団間ならびに集団内の遺伝的多様性を評価し、集団構造を比較する。
これらによりベトナムのツバキ属植物の遺伝的多様性を評価し、系統樹を構築して系統関係を明らかにするとともに、多様性中心を明らかにする。また集団の遺伝子構造に基づいて緊急に保全の必要な単位(集団)を選定し、保全を図る。
高次倍数体と種内倍数性を有する分類群の遺伝的多様性をどのように評価するか、集団構造をどのように比較するかについて、ツバキ属以外にも適用可能な知見が得られることを期待している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] Da Lat University/VNU University of Science/Hoa Lu University(ベトナム)

    • 国名
      ベトナム
    • 外国機関名
      Da Lat University/VNU University of Science/Hoa Lu University
  • [雑誌論文] Camellia tuyenquangensis (Theaceae), a new species from Vietnam2017

    • 著者名/発表者名
      Le Ninh Nguyet Hai、Uematsu Chiyomi、Katayama Hironori、Nguyen Lieu Thi、Tran Ninh、Luong Dung Van、Hoang Son Thanh
    • 雑誌名

      Korean Journal of Plant Taxonomy

      巻: 47 ページ: 95~99

    • DOI

      10.11110/kjpt.2017.47.2.95

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Description of wild Camellia genetic resources collected from South of Vietnam.2017

    • 著者名/発表者名
      T. L. Nguyen, V. D. Luong, K. Fukuyama, H. Katayama, C. Uematsu
    • 学会等名
      日本育種学会

URL: 

公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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