研究課題
これまでの探索調査で得られたツバキ属植物のうち、25種29集団194個体について13のSSRマーカーを用いて集団遺伝学的解析を試みた。なお前年度までの結果に基づき、SSRマーカーで1サンプルに3またはそれ以上のアリルが得られた個体は倍数体と判断し、解析から除外した。その結果29集団のHoは0.341-0.764で平均0.533、Heは0.486-0.827で平均0.649と、2集団を除いてHo がHeより小さい傾向を示した。これらの値はスギやヒノキ、クヌギなどで報告されている値とほぼ同程度かやや低かったが、中国の野生梨よりは高かった。AMOVAの結果、集団間変異が37.48%、集団内の変異が62.52%で、集団間に分化が生じている事が示された。STRUCTURE解析を行い、Delta KならびにL(K)の値に基づき、K=3、4、5の場合についてバーグラフを作成すると、従来の形態形質に基づいて分類されている4亜属のうち、原始ツバキ亜属とチャ亜属には多様な想定祖先集団が関与していることが示された。一方ヒメサザンカ亜属と、C. yokdonensisを除くツバキ亜属では、K値にかかわらず想定祖先種が1種となったが、供試種数や個体数が少なかった事を反映している可能性がある。複数の種でアドミクスチャーとなっており、雑種由来と考えられた。供試194個体の相互の関係をNJ法で無根系統樹として描出すると、K値による想定祖先集団ごとのまとまりと、葉や花の形態的特徴によるまとまりに部分的に相関が見られた。相関の見られた形態形質はツバキ属植物の分類を検討する上で重要な形質と考えられる。本研究の結果、ベトナムのツバキ属植物が遺伝的に多様であることが示されたが、集団のサイズが急激に減少している自生地については集団内の遺伝子型の多様性を考慮した保全が急務と考える。
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Korean Journal of Plant Taxonomy
巻: 48 ページ: 115-122
https://doi.org/10.11110/kjpt.2018.48.2.115