研究実績の概要 |
mRNAのポリA鎖長はmRNAの安定性と翻訳効率に影響を与えうる転写後調節にとって重要な要素であり,厳密に調節される必要がある。モデル植物であるシロイヌナズナは複数のポリA分解酵素をもつ。いくつかのポリA分解酵素の逆遺伝学解析が行われ,それぞれが異なる表現型を示すことから,それぞれが別個の標的遺伝子をもつと考えられている。我々はポリA分解酵素のひとつであるAtCCR4a/bに着目して研究を進めている。atccr4a/b二重変異株は栄養応答やバイオマスなどの生育に関連する様々な表現型を示すことから,農学的観点からも重要なポリA分解酵素と考えられる。 本研究ではatccr4a/b二重変異株とそのコントロール株を用いて,ポリA鎖長を網羅的に検出するTAIL-seqを行うことで標的遺伝子群を同定し,さらに翻訳効率を網羅的に測定するRibo-seqとmRNA蓄積量の網羅的解析であるRNA-seqを組み合わせることで,mRNAの安定性と翻訳効率のどちらに影響をおよぼしているのかを明らかにする。TAIL-seqとRibo-seqは植物においてはその研究例はいまだ限られており,本年度はそれらの実験系の確立に取り組んだ。Ribo-seqに関しては最近発表された論文 (Hsu et al., PNAS, 2016) をもとに,我々が用いる植物サンプルに適した実験プロトコールへと改変し確立した。現段階で予備的なデータを得ており,今後詳細に解析を進める。TAIL-seqは動物細胞においてその手法は確立しているが (Chang et al., Mol. Cell, 2014, Lim et al, Genes & Dev., 2016),植物に適応させるためには実験手法に改良が必要であることが判明したため,さらなる予備実験が必要であることが明らかとなった。
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