研究課題
mRNAの3末端付加されたポリA鎖は,mRNAの安定性と翻訳効率の両方に影響を及ぼす重要な要素と考えられている。本研究ではシロイヌナズナのポリA分解酵素のひとつであるAtCCR4a/4bに着目して,変異株を用いた遺伝学的解析と生化学的解析を組み合わせた研究を展開している。atccr4a/4b変異株は植物の成長に伴って,バイオマスの増加,概日時計の遅延などの様々な表現型を示す。つまりAtCCR4a/4bによるポリA長制御は植物の生育にとって重要な役割を持つといえる。この役割を理解するためには,AtCCR4a/4bが標的としているmRNAの単離が不可欠である。本研究ではatccr4a/4b変異株とそのコントロール株を用いて,ポリA鎖長を網羅的に検出するTAIL-seqを行うことで標的遺伝子群を同定し,さらに翻訳効率を網羅的に測定するRibo-seqとmRNA蓄積量の網羅的解析であるRNA-seqを組み合わせることで,mRNAの安定性と翻訳効率のどちらに影響をおよぼしているのかを明らかにすることを目指す。本年度はatccr4a/4b変異株が示すバイオマス増加の表現型に着目して,統合的網羅解析を行うための植物体サンプルの調整のための条件検討を行い,翻訳量を網羅的に測定するRibo-seqとmRNA量の網羅的測定であるRNA-seqを行った。胆振東部地震の影響で植物体サンプルの調整に予定外の時間を要したため,データ解析の途中ではあるが,統計的な解析に十分に耐えうる量および質のデータを得ることができた。また,TAIL-seqに関しては,新規に報告された方法を植物サンプルに対応させるための予備実験を進めた。新規の方法では,従来の方法では大きな問題であったrRNAの混入を大きく抑えることができ,ゆえに検出の感度を上げることもできる。また,実験にかかるコストを大幅に削減することができるという多くのメリットがある。
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Plant Cell. Physiol.
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Plant Biotech.
Population Ecology
巻: 61 ページ: 5~13
10.1002/1438-390X.1010