研究課題
mRNA上のSNPを判別できるシステムであるSNP cDNA typing法を用いて、iPS細胞誘導におけるX染色体の再活性化を解析する系の構築を始めに行った。まず、M. musculusのC57BL/6J(B6)とM. spretus(Sp)の間には多数のSNPが存在することから、B6由来のHprt遺伝子ノックアウトマウスとSpを掛け合わせて、マウス胎児繊維芽細胞(MEF)を作製した。そして、このMEFをHAT培地で培養することにより、Hprt発現細胞、すなわちSp由来のX染色体が活性化されている(bXi,sXa)MEFを選択することに成功した。同様に、B6とSpを掛け合わせて得たMEFを、6-Thioguanineを含む培地で培養することにより、Hprt非発現細胞、すなわちB6由来のX染色体が活性化されている(bXa,sXi)MEFを選択することにも成功した。次に、選択してきたMEFにiPS細胞誘導用SeVdpベクターを感染させることによって初期化を誘導し、誘導過程で起きると考えられている、不活性化X染色体の再活性化によるmRNAの発現誘導が、SNP cDNA typingによって検出できるか検討した。その結果、HAT処理をしたMEFからiPS細胞を誘導した場合、誘導前は、Sp由来のX染色体からの発現が90%以上であるのに対し、誘導28日後には、Sp、B6由来いずれのX染色体からも、ほぼ等しくmRNAの発現が確認された。この結果から、1)HAT処理をしたMEFからもiPS細胞誘導ができる、2)iPS細胞誘導時に起こるX染色体の再活性化をSNP cDNA typing法で検出できる、ということが明らかになった。また、既に確立していたLamp2 mRNAの発現を検出するSNP cDNA typing法に加えて、Msn mRNAの発現を検出する系も構築し、X染色体再活性化を空間的に解析する準備を整えた。
2: おおむね順調に進展している
SNP cDNA typing法を用いて、iPS細胞誘導時のX染色体再活性化の検出に成功したため。
我々独自のpaused iPS細胞において、X染色体の再活性化が起きているのか解析を行い、さらに、再活性化の進行度がKlf4量依存的に調節可能であるか検証する。
SNP cDNA typing用に、プローブを多く設計する予定であったが、今年度中には2つしかプローブを設計しなかったために、当初の予定よりも支出が少なくなった。
今年度設計できなかったプローブを次年度に設計する予定であるため、物品費が当初の予定よりも多く必要になる予定。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Stem Cell Reports
巻: 8 ページ: 787-801
doi: 10.1016/ j.stemcr.2017.01.026