研究課題/領域番号 |
16K07244
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西村 健 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80500610)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / X染色体 / 再活性化 / 3S reprogramming system / SNP |
研究実績の概要 |
iPS細胞誘導時のX染色体再活性化を検出するために、HprtノックアウトC57BL/6J(B6)とM. spretus(Sp)を掛け合わせたマウスから調整したMEFからiPS細胞誘導を行い、その誘導過程で、二本あるX染色体のいずれからRNAの転写が起きているかSNP cDNA typingで検定する系を前年度構築した。そしてその系を使って、B6由来のX染色体から転写されるRNAと、Sp由来のものの比率がiPS細胞誘導の進行に従って50:50に近づき、X染色体再活性化が実際に検出できることを明らかにした。 今年度はまず、SNP cDNA typingで得られた比率がX染色体から転写されたRNAの比率を反映しているか検討するために、転写されているRNAをクローニングして実際に配列を読んでどちらのSNPを持つか調べることによって比率を検討した。その結果、クローニングで得られたSNPの比率の結果とSNP cDNA typingの結果がほぼ一致したので、SNP cDNA typingで得られた結果は実際のRNA転写比率を反映していることが明らかになった。 次に、X染色体再活性化を経時的に解析するために、我々独自の3S reprogramming systemを用いて作製した、誘導が途中で停止したiPS細胞に対してSNP cDNA typingを行い、X染色体の再活性化状態の異なるiPS細胞を誘導できるか検討した。その結果、低Klf4発現で誘導されたiPS細胞では再活性化が起きていなかったのに対し、高Klf4発現で誘導された細胞では再活性化が起きていた。このことから、iPS細胞誘導の経時的な進行度とX染色体再活性化を、Klf4発現量を調節することによって対応させることが可能であり、Klf4を変えて誘導したiPS細胞を用いて、経時的なX染色体再活性化の解析が可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3S reprogramming systemをSNP cDNA typingに応用することに成功し、X染色体活性化状態の異なる細胞を容易に得ることが可能になったため。
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今後の研究の推進方策 |
X染色体活性化状態が異なる細胞を、Klf4発現量を変えることによって複数用意し、それらに対してRNA-seqを行って、iPS細胞誘導のどの段階でどこが再活性化されているか、経時的・空間的にX染色体再活性化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサーを用いた解析のために、「その他」として受託解析費を多く見積もっていたが、今年度は少ししか進めることができなかった。サンプルの準備は順調に進んでいるので、次年度は受託解析費が多く必要になる予定である。
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