研究課題
神経細胞における蛋白質合成は、様々な精神・神経疾患と関わりが強く注目を集めている。その一方で、生理学的条件下の個体レベルでの翻訳制御解析は、他の階層における遺伝子発現解析と比べ技術的に困難であった。本研究では、神経特異的に発現する翻訳制御因子として知られるRNA結合蛋白質Elavlファミリーのうち、特徴的な発現パターンを有するElavl2に着目し、Elavl2欠損マウス脳を研究材料として、Elavl2依存的な翻訳制御プログラムを明らかにする。(1)生体脳における包括的Elavl2-RNA相互作用マップ解析(HITS-CLIP法)を行う。(2)マウス脳から翻訳中mRNAのコード領域の包括的定量的解析技術(in vivoポリソームプロファイリング法)により、生体内翻訳制御解析システムを構築する。以上を組み合わせた統合的解析により、脳内におけるElavl2蛋白質依存的な翻訳制御機構を明らかにする。さらに、Elavl2欠損マウスを用いた、Elavl2標的遺伝子群を介した生物学的意義の解析を行い、翻訳制御による神経細胞機能の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度には遺伝子改変マウスの繁殖、サンプリングも十分に進み、HITS-CLIP解析および胎児脳から翻訳中mRNAのライブラリーの作成および遺伝子解析手法の立ち上げも順調に進んでいる
平成28年度に進めた解析データをもとにバイオインフォマティクス解析を実行し、生化学的解析手法の効率を検証する。さらに野生型、Elavl2欠損マウスより得られたデータのバイオインフォマティクス解析へと進める予定である。本年度は、上記より得られたデータを、マウス欠損マウスを用いた下流標的因子の発現検証実験およびモデル化された分子メカニズムについて生化学的検証の実行までを目標としたい。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Int J Dev Neurosci.
巻: 55 ページ: 124-30
10.1016/j.ijdevneu.2016.01.002
Nucleic Acids Res.
巻: 44(16) ページ: 7555-67
10.1093/nar/gkw372
Stem Cell Reports.
巻: 6(4) ページ: 496-510
10.1016/j.stemcr.2016.02.011
Nature.
巻: 534(7607) ページ: 407-11
10.1038/nature17988
Translational Psychiatry
巻: 6(11) ページ: e934
10.1038/tp.2016.206
日本臨床
巻: 74巻増刊号10 ページ: 503-507
「脳科学辞典」(web辞書)
巻: なし ページ: web
10.14931/bsd.6736