研究課題/領域番号 |
16K07248
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山本 歩 静岡大学, 理学部, 教授 (70359082)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 減数分裂 / テロメア / セントロメア / 相同染色体 / 姉妹染色分体 / キネトコア / スピンドル |
研究実績の概要 |
分裂酵母では減数分裂期にテロメアが酵母の中心体であるSpindle Pole Body (SPB)近傍に集合して相同染色体の対合やスピンドル形成に関与し、一方、SPBに局在していたセントロメアがSPBから脱離することによって、減数分裂型のセントロメアが形成されキネトコアが融合する。テロメアとセントロメアのSPB局在はLINC核膜複合体に依存しているが、それらの局在制御機構、および局在の機能の詳細は完全に解明されていない。本研究ではテロメア集合とセントロメアの脱離の制御機構および制御連関の減数分裂における役割を明らかにし、LINC複合体を介した染色体の核内配置の制御と機能の解明を目指した。 昨年度までにテロメア集合が阻害されるとSPBからセントロメアの脱離が阻害されることを見出し、さらにこの阻害がスピンドル形成を保証する機構であることを見出した。今年度はさらに、この阻害が細胞の接合時に見られる核融合に関わり、この制御によってSPBにテロメアあるいはセントロメアが相互作用し続けることによって効率の良い核融合が起こることを見出した。また、この核融合において、SPBとセントロメアあるいはテロメアとの相互作用に依存しない、ダイニンモーターに依存した核融合機構が存在することも見出し、この2つの機構による核融合モデルを提唱した。また、テロメア集合に依存して形成されるキアズマについて、その相同染色体と紡錘体の結合形成における機能を解析したところ、相同染色体と紡錘体の結合形成時にキアズマは相同染色体のSPB間の往復運動に同調性を生み出し、この往復運動が結合修正に関わる可能性を見出した。さらにキネトコア融合を解析する実験系を用い、コヒーシンやDNA複製制御因子であるMrc1を介したセントロメアのコア部位の結合がキネトコア融合に必要であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テロメア集合とセントロメアのSPBからの脱離制御が接合時における核融合にも関わることを新たに見出し、この成果を論文にまとめて誌上発表することができた。また、キアズマの機能解析において、染色体の往復運動を相関関数という新たな手法を取り入れることによって、定量的に評価できることを見出した。さらに、キネトコアシグナルの形状を定量的に解析することによってキネトコアの融合状態を評価できる可能性を見出し、減数分裂型のコヒーシン因子やDNA複製制御因子であるMrc1によるセントロメアのコアの結合がキネトコア融合に必要であることを見出した。以上より順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
キネトコア融合にはMoa1因子が関与すると考えられている。そこで現在開発中のキネトコア融合評価法を用い、Moa1破壊株におけるキネトコアの融合状態およびセントロメアのコアの結合状態を解析し、それによってMoa1のキネトコア融合における機能を明らかにしていく予定である。また、接合フェロモン応答によってセントロメアはSPBから脱離し、それによってキネトコアの再形成を介してキネトコア融合が起こると考えられている。そこで、pat1キナーゼの変異株を用いて接合フェロモン応答を起こさずに減数分裂を誘導し、キネトコア融合評価法を用いてキネトコア融合状態およびセントロメアのコアの結合状態を解析する。これによって接合フェロモン応答がキネトコア融合やセントロメアのコアの結合にどのように関わるのかを明らかにする。さらに、本年度は研究課題の最終年度に当たるため、これまでの成果を論文として誌上発表することに重点をおいて進める予定である。
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