研究課題/領域番号 |
16K07252
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 正之 京都大学, 医学研究科, 講師 (40398798)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | Cdc7 kinase / replisome stability / deubiquitinase / replication fork |
研究実績の概要 |
1. 脱ユビキチン化酵素USP7によるASKタンパク質安定化の分子メカニズムの解明。 U2OS細胞にUSP7に対するsiRNAを導入するとASKタンパク質の減少が観察された。逆に、U2OS細胞への野生型USP7の過剰発現によってASKタンパク質が安定化することを確認した。また、不活性変異型USP7(C223S)を過剰発現させても上記の効果が認められないことも確認した。さらに、APC/C (Anaphase promoting complex/cyclosome)の活性制御サブユニットの1つであるCdh1タンパク質の過剰発現によるASKタンパク質の減少 (すでに発表済み)が、野生型USP7の過剰発現によって抑えられることも見出した。また、免疫沈降法によって、ASKとUSP7の結合を確認した。これらの結果からUSP7がASKタンパク質の安定化に重要な役割を果たしていることが示唆された。 2. AID (Auxin-induced degron)-Cdc7細胞株、AID-Chk1細胞株の樹立。 AID-tagを付加したCdc7またはChk1を発現するベクター(pAID-Cdc7, pAID-Chk1)を作成した。これらの発現ベクターを、293T細胞に一過性に導入して、AID-Cdc7 タンパク質、AID-Chk1タンパク質の発現を確認した。しかし、これらのべクター を各々、Cdc7ノックダウン細胞、Chk1ノックダウン細胞に安定的に導入した細胞株を樹立しようと試みたが、現在のところ目的の細胞株は得られていない。 3. Cdc7キナーゼによる複製フォーク安定化のメカニズム。 U2OS細胞において、hydroxyureaでDNA複製フォークの進行を阻害した状態でCdc7キナーゼの活性を阻害すると、フォークに結合しているタンパク質の一部がクロマチンから脱落することを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AID-tagを付加したCdc7またはChk1を発現するべクター(pAID-Cdc7, pAID-Chk1)は作成し、293T細胞内でのAID-Cdc7, AID-Chk1の一過性発現は確認できたが、これらを各々、Cdc7ノックダウンU2OS細胞、Chk1ノックダウンU2OS細胞に安定的に導入した細胞株を樹立できていない (得られたクローンでのAID-Chk1タンパク質、AID-Cdc7タンパク質の発現量が低く、Cdc7ノックダウンU2OS細胞、Chk1ノックダウンU2OS細胞をレスキューできない)。 また、Cdc7ノックダウンHeLa細胞を新たに樹立して、同様にAID-Cdc7タンパク質を安定的に導入した細胞株を樹立しようと試みたが、現在のところ成功していない。
|
今後の研究の推進方策 |
AID-Cdc7細胞株、AID-Chk1細胞株は本研究の中心課題であるプロテオミクス解析に用いるものであり、今後も樹立を試みる。HeLa細胞を用いた実験は現在も進行中である。もしこれらの細胞株の樹立がうまくいかない場合には、AID-ASK細胞株、AID-Claspin細胞株(ASK、Claspinはそれぞれ、Cdc7、Chk1 の活性化因子である)の樹立を検討する。これらの実験もU2OS細胞だけでなく、HeLa、293T、MCF7など複数の細胞株を用いて行う予定である。また、低分子キナーゼ阻害剤 (PHA-767491(Cdc7 inhibitor), UCN-01 (Chk1 inhibitor))の使用も検討し、プロテオミクス解析の条件検討をさらに進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり、消耗品等に使用する予定。
|