研究課題
熱ショック応答を制御する熱ショック因子(HSF)は、非ストレス条件下でも絶えず転写の活性化や抑制に働いている。HSF1とポリADPリボシル化酵素のPARP1およびPARP13とが三者複合体を形成すること、その複合体形成がDNA損傷誘導性の遺伝子発現を制御することが分かった。非ストレス条件下で、三者複合体が多くの遺伝子発現を抑制することをDNAマイクアレイ法より明らかにした。HeLa細胞の内在性HSF1をPARP1やPARP13と結合できないHSF1点変異体へ置換すると非ストレス条件下でのGADD34やGADD45Aの発現誘導は亢進された。さらに、DNA損傷を誘導するドキソルビシン処理により、GADD34やGADD45Aの発現誘導は野生型HSF1の置換に比べ、抑制されることがわかった。GADD34やGADD45Aのプロモーター領域にはHFS1が結合するHSE領域が存在し、HSF1-PARP1-PARP13複合体が結合していることをChIP assay法より明らかにした。PARP1のノックダウンによるHSF1とPARP13のHSE領域へのリクルートには変化はなかったが、PARP13のノックダウンによりPARP1リクルートがほとんど見られなくなった。この結果より、三者複合体においてPARP13はPARP1を留めておくために必要であることが分かった。また、これらの領域にはPARP1と相互作用することが知られているHDAC1も集積していた。DNA損傷を誘導するドキソルビシン処理でPARP1は自己 ポリADPリボシル化を受け、プロモーター上に存在したPARP1はHSF1-PARP13から解離して下流の遺伝子上にPARP1が再分布することで転写を亢進させることが分かった。このHSF1-PARP1-PARP13複合体のゲノム上での集積される位置を明らかにするためにChIP-seqを行った。その結果、多くの位置でこの三者複合体が存在することが確認され、DNA損傷後の遺伝子発現に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した研究計画通りに研究が遂行している。
これまでに、DNA損傷後にPARP1は自己 ポリADPリボシル化し、プロモーター上に存在したPARP1はHSF1-PARP13から解離して下流の遺伝子上に再分布することで転写を亢進することを明らかにした。また、非ストレス状態で三者複合体にHDAC1がリクルートされることがわかった。今後は、PARP1のPAR化の亢進には、PARP1のアセチル化やリン酸化が関与することが知られている。そこで、DNA損傷でPARP1のPAR化が顕著に亢進し、一方で定常状態ではPARP1のPAR化は抑えられていることが示唆される。そこで、HeLa細胞を用い脱アセチル化酵素であるHDAC1のノックダウンを行い、内在性HDAC1と野生型HDAC1あるいは酵素活性を欠損したHDAC1点変異体を置換し、PARP1のアセチル化状態を抗アセチル化抗体で調べる。また、HSF1-PARP複合体形成変化を免疫沈降で、さらにHSF1-PARP複合体の集積変化をChIPアッセイ法によって調べる。さらに、他の脱アセチル化酵素についても検討する。さらに、DNA損傷部位への修復因子集積に対する三者複合体の効果について検討する。HeLa細胞を用いHSF1のノックダウンを行い、内在性HSF1と野生型HSF1あるいはPARP1やPARP13と結合できないHSF1点変異体を置換し、IR, UVあるいはドキソルビシン処理後のfoci形成への影響をリン酸化H2AX,53BPやRad51抗体を用いて免疫染色で調べる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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