DNA複製を中心としたゲノムの制御機構では、PCNAがRFC複合体のRFC1-RFCによりクロマチンにロードされて様々な因子集合と反応促進の足場となり機能する。一方、役割を終えたPCNAは別のRFC複合体、Elg1-RFCによりクロマチンからアンロード(除去)される。これまでに、RNAi法やAID法によるコンディショナル変異細胞で細胞内Elg1量を低下させると、S期の遅延や染色体構造異常が起こることから、PCNAのロードだけでなく、除去の重要性を示してきた。しかしこれまでの解析では、Elg1が欠損してもG2/M期への進行過程でPCNAはクロマチンから除去されることから、Elg1-RFCとは別の除去機構が想定された。RFC複合体のRFC1-やCtf18-RFCについては、PCNA除去の機能は示さなかった。従って、新規因子によるPCNA除去が強く示唆された。 本研究に類似して、複製で機能するDNAヘリカーゼMCM2-7はS期開始前、Cdt1やCdc6によりクロマチンにロードされるが、複製完了後にはクロマチンから除去される。これについては、ユビキチンリガーゼ(E3)であるCRL2-LRR1複合体によってMCM2-7がポリユビキチン修飾を受け、p97複合体によりクロマチンから除去されることが報告された。そこで、これら複合体のPCNA除去への関与を検討した。それぞれの複合体中で主の機能を担うLRR1やp97のRNAiを行っても、S期のクロマチン結合PCNA量に変化はなかった。しかしM期では、LRR1のRNAiではPCNAが除去されるが、p97のRNAiではPCNAがクロマチンに残った。これは、MCM2-7とは別のE3でユビキチン修飾を受けた後、p97複合体によってクロマチンから除去されることを示す。そこで現在は、PCNAをユビキチン修飾するE3酵素同定のための解析が進行中である。
|