研究課題/領域番号 |
16K07262
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
寺脇 慎一 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (10452533)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Wntシグナル / DIXドメイン / X線結晶構造解析 / 蛍光エネルギー共鳴移動 |
研究実績の概要 |
本年度は、AxinとCcd1のDIXドメイン間で形成されるヘテロオリゴマーのX線結晶構造解析をおこなった。これまでにAxin-Ccd1ヘテロオリゴマーの結晶化には成功していたが、X線回折能が弱くアミノ酸側鎖の位置を決定できていない。そこで、Axin-Ccd1複合体結晶のX線回折能を改良するために、Ccd1のホモオリゴマー状態を均一化する変異体の同定を試みた。Ccd1は、培養細胞内で過剰発現させると細胞内濃度の増大に伴いホモオリゴマー形成が促進され、βカテニン依存的な転写活性化を引き起こすが、マウス由来Ccd1(mCcd1)はゼブラフィッシュ由来Ccd1(zCcd1)と比較すると転写活性が低レベルであり、mCcd1に特異的な活性制御機構を持つことが予測された。mCcd1とzCcd1のホモオリゴマー構造を基にした変異体解析の結果、mCcd1は自身でホモオリゴマー化を抑制して、Axinへの結合を弱めることを明らかにした。この結果をもとに、Ccd1のホモオリゴマー化抑制に必須な3つのアミノ酸残基を全てアラニンに置換した多重変異体を用いて、Axinとの複合体結晶を調製し、X線回折実験をおこなったところ、分解能2.8オングストロームのX線回折データを収集することに成功した。AxinおよびCcd1のDIXドメインをサーチモデルとして用いた分子置換法による構造解析によって位相を決定し、現在、複合体構造の精密化を進めて、AxinとCcd1 との相互作用残基について特定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Axin-Ccd1複合体の結晶について、X線回折能を改良することに成功した。構造解析は完了の見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
決定したAxin-Ccd1複合体の立体構造を基に、相互作用残基を特定して、変異体を用いた分子間相互作用解析を進める。また、オリゴマー構造変化を解析するFRET実験についても蛍光標識体の作成と蛍光測定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究が予想以上に進展したため、検討のために予定していた一部の物品を購入する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
CCD1-Axin複合体の立体構造から明らかになった分子間相互作用に関わるアミノ酸残基変異体の作成、変異体を利用した結合実験、オリゴマー構造変化の蛍光分光分析および培養細胞を利用した転写活性測定などに予算を再配分して、効率的に研究を進める。
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