クライオ電子顕微鏡単粒子解析で既に解かれた線虫innexin-6(INX-6)の原子構造はギャップ結合を形成した状態で、かつ可溶化状態のチャネルであった(Oshima et al. (2016))。本来膜タンパク質が機能する脂質二重膜中に再構成された状態で構造解析できれば、より天然に近い状態での機能の解明につながる。また、ギャップ結合形成メカニズムを理解するためには、ギャップ結合が外れたヘミチャネルの状態で構造解析を行う必要がある。これらの目的を達成するため、INX-6ヘミチャネルを脂質二重膜に再構成した状態でクライオ電子顕微鏡構造解析に取り組んだ。 ナノディスク再構成した野生型INX-6ヘミチャネルの構造はチャネルの通路の中に二重層の密度が現れ、細胞外領域の第2ループが不安定化していた。可溶化状態の野生型INX-6チャネルとナノディスクに再構成したN末端欠失変異体の構造と比較すると、脂質二重膜が存在するか否かでN末端の配置が異なっており、ナノディスク再構成によってチャネルの通路が妨げられていると解釈されるものであった。共同研究に基づく分子動力学シミュレーションでは脂質分子が隣接するサブユニットの膜貫通領域の間に入り込む様子が確認され、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的機能解析の結果はintactなN末端が正常にチャネルを開くのに不可欠であることを示すものであった。これらを総合して、INX-6ギャップ結合チャネルが持つ大きな通路が脂質二重膜中でどのように閉じるのかという問題について、脂質分子がチャネルの通路に入り込むと同時にINX-6のN末端が構造変化を起こし、通路を塞ぐというメカニズムが示唆された。
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