研究課題/領域番号 |
16K07267
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神山 勉 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30170210)
|
研究分担者 |
井原 邦夫 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 陰イオン輸送性ロドプシン / プロトン輸送性ロドプシン / X線結晶構造解析 / 低温原子間力顕微鏡 / バクテリオロドプシン / ハロロドプシン / 低温原子間力顕微鏡 / レチナールタンパク質 |
研究実績の概要 |
1)光駆動塩素イオンポンプとして知られるハロロドプシンの反応中間体の結晶構造解析を推し進め、主要な反応中間体(L1、L2、N、N'、およびO中間体)の構造情報を求めてきたが、イオン輸送サイクルの最後のステップで生じる長寿命の反応中間体(HR')の構造は未決定のままであった。本年度においては、3次元結晶中でHR'を高効率でトラップする実験条件を探るためハロロドプシンの光反応サイクルを詳細に分析した。その結果、HR'ではレチナール色素が13-シス型の構造をとること、O中間体には2種類の異性体(13-シス・レチナールを含むOcisと全トランス・レチナールを含むOtrans)が存在すること、さらに、HR'の形成効率(Ocisー>Otrans遷移に対するOcisー>HR’遷移の優先度)が塩素イオン濃度に強く依存することが明らかになった。一方、HR’をトラップした3次元結晶のX線回折データからはHR’と暗状態との構造上の差が極めて小さいことが示唆された。 2)塩素イオン非存在下でのハロロドプシンの光反応について調べ、赤色光照射下で11-シス型異性体が形成されうることを見出すとともに、その構造を1.7Å分解能で決定した。 3)バクテリオロドプシンのプロトン輸送サイクルにおける主要な反応中間体(K,L,M,およびO)の構造情報はすでに得ているが、大きな構造変化が起こると想定されているN中間体の構造については未決定のままである。本年度は、大きな光誘起構造変化を許容するような3次元結晶を作製することを目指して、異なる種類の古細菌型ロドプシン(アーキロドプシン-3、センソリーロドプシン-2、バクテリオロドプシン変異体)の結晶化を企て、結晶中の膜タンパク質の充填具合を自在に制御できる技術の確立に必要なデータを蓄積した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の退職(2017年3月31日)にあたり今までの研究室の閉鎖作業(実験装置の撤去、および退職後の研究環境の整備)が思いの外長く続き、研究計画の遂行に少し遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ハロロドプシンのイオン輸送サイクルの長寿命反応中間体(HR')の構造決定を行う。HR’と暗状態との構造上の差異を詳らかにするため、3次元結晶の光照射条件を改良してHR’の捕捉率を高めるとともに、X線回折データの分解能の改善を図る。 2)プロトン輸送性ロドプシンのN中間体の構造解析: バクテリオロドプシンの変異体を用いて結晶中の膜タンパク質の充填具合を自在に制御できる技術の確立を目指す。 3)低温原子間力顕微鏡による古細菌型ロドプシンの高次構造の解析: -100度の低温に冷却したエタノール中でイメージングできる低温原子間力顕微鏡の安定した操作を可能にし、凍結した生体膜試料の割断面の形状をナノメールの分解能で解析できるようにする。
|