研究課題
プリオンタンパク質の正常型から異常型への構造遷移がプリオン病の原因と考えられている。申請者等は正常型プリオンタンパク質に強く結合し、プリオンタンパク質の構造遷移を抑制できる(すなわち抗プリオン活性を有する)RNA分子、R12を得てその立体構造とプリオンタンパク質との相互作用様式を明らかにしてきた。申請者等はR12の構造情報およびプリオンタンパク質との相互作用情報を基に、より高い抗プリオン活性を有するRNA分子、R24を設計した。R24は高い抗プリオン活性を持つが、NMRスペクトルから立体構造に多型性があることがわかり、R24の立体構造の決定および抗プリオン活性を発揮するメカニズムの研究が困難であることがわかった。そこで構造解析に適したR24類似体の配列を探索した。R24の抗プリオン活性に与える影響が少ないと予想される部位に残基を付加し、高い抗プリオン活性を維持しつつも、良好なNMRスペクトルを示すR24類似体の配列を見出した。平成30年度は、29年度中に行っていたR24類似体の立体構造の解析を進行させ、十分に精密化を行い、立体構造の決定に成功した。得られた構造について、水溶液中での分子動力学シミュレーションによる構造リファインメントを行った。R24類似体は高い抗プリオン活性を持つ、核酸分子である。本研究が達成されることで、抗プリオン薬剤の創薬のための基盤の確立と、また近年注目さている核酸医薬の発展へと寄与することが期待される。
3: やや遅れている
NMR法によって得られた構造情報に基づき、R24類似体の立体構造をXPLOR-NIHプログラムにより決定した。さらに当初の計画にはなかったが、この構造について、AMBERによる水溶液中での分子動力学シミュレーションによる構造リファインメントを行った。これによって、より精錬された構造を得ることができた。ここまでの研究成果を学術論文に執筆中である。その反面、計画予定であった正常型プリオンタンパク質との相互作用の解析が十分に達成されていないため、やや遅れているとした。
R24類似体の立体構造と、その抗プリオン活性の評価について論文として発表する。続いてR24類似体と正常型プリオンタンパク質との相互作用について、ゲルシフト法等の生化学的実験と、CD 及びNMRを用いた分光学的実験によって調べて、分子レベルおよび残基レベルの相互作用の情報を得ることを目指す。得られた相互作用情報と、R24類似体の立体構造の情報を基に、複合体のモデルを構築する。R24類似体と正常型プリオンタンパク質の複合体のNMRスペクトルが解析可能なレベルで良好なものであれば、R24類似体と正常型プリオン蛋白質の複合体の立体構造の解析を行う。
(理由)R24類似体の単独での立体構造の解析に注力しているため、正常型プリオンタンパク質の調製に必要な試薬一般、および正常型プリオンタンパク質に安定同位体標識を施すための13C標識グルコース及び15N標識塩化アンモニウムを大量に購入しなかったため、物品比が低く抑えられた。(使用計画)R24類似体の単独での構造解析が終了後、正常型プリオンタンパク質との相互作用研究を行う。この研究を行うにあたり、13C及び15N安定同位体標識を施した正常型プリオンタンパク質を得るのに必要な試薬一般、13C標識グルコース及び15N標識塩化アンモニウムを購入するのに使用する。またRNA分子の構造解析に必要となる、13C, 15N安定同位体標識された核酸合成用アミダイトの購入を計画している。
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The FEBS Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/febs.14819
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0204160
10.1371/journal.pone.0204160