研究課題
プリオンタンパク質の正常型から異常型への構造遷移がプリオン病の原因と考えられている。申請者等は正常型プリオンタンパク質(PrPC)に強く結合し、プリオンタンパク質の構造遷移を抑制できる(すなわち抗プリオン活性を有する)RNA分子、R12を得てその立体構造とプリオンタンパク質との相互作用様式を明らかにしてきた。申請者等はR12の構造情報およびプリオンタンパク質との相互作用情報を基に、より高い抗プリオン活性を有するRNA分子、R24を設計した。R24は高い抗プリオン活性を持つが、NMRスペクトルの質が悪く、R24の立体構造の決定および抗プリオン活性を発揮するメカニズムの研究が困難であることがわかった。そこで構造解析に適したR24類似体の配列を探索した。R24の抗プリオン活性に与える影響が少ないと予想される部位に残基を付加し、高い抗プリオン活性を維持しつつも、良好なNMRスペクトルを示すR24類似体の配列を見出した。平成31年度は、R24類似体の立体構造のリファインメントを完了させた。R24類似体は、鎖の前半部分(1-11残基)と後半部分(14-24残基)がそれぞれ1つのテトラッド構造と1つのヘキサッド構造からなる平行型四重鎖構造を形成していた。そして各四重鎖構造はヘキサッド構造同士でスタッキングするtail-to-tail様の構造を示した。我々が過去に決定したR12とPrPCの結合部分ペプチド(P16)との複合体を基に、R24類似体とP16の複合体モデルを構築した。その結果、R12-P16複合体に見られた静電相互作用およびスタッキング相互作用がよく保存されていた。よってR24類似体はR12と同様の相互作用様式でPrPCを高い親和性で捕捉するとともに、1分子で構造形成することによって獲得した溶液中での安定性が、高い抗プリオン活性に寄与したと考えられる。
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