研究課題/領域番号 |
16K07270
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
杉山 成 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (90615428)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリアミン / 細胞増殖因子 / 生理活性物質 / アセチル転移酵素 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
ポリアミン(スペルミジン[SPD]など)とは、アミノ基を複数もつ直鎖脂肪族炭化水素の総称であり、ウィルスからヒトに至るまで広く生体内に存在する。生体内でポリアミンは、RNA/DNAの安定化、膜の安定化、細胞増殖・細胞分裂の制御、タンパク質合成など、生理活性物質として生命活動維持に重要な役割を果たしている。ポリアミン機能解明への第一目標として、細胞内のポリアミン濃度調節に関与しているポリアミンのアセチル転移酵素SATと取り込み系分子複合体PotABCDの立体構造を明らかにすることにより、ポリアミン濃度調節機構を構造生物学的に解明していくことを目的としている。 平成29年度は、PotAサンプルについて、大腸菌にてHis-tagを付加した融合タンパク質として発現し最終精製標品を得た。さらに、それを用いて構造解析可能な良質な結晶を得ることができた。また、SATにおいてはSAT-SPD-CoA三者複合体の最終構造を得た。その構造からSPDは、ダイマーとダイマーの接触面に位置しており、CoA分子から13A離れていることが明らかとなった。このSPD結合部位は、アロステリック部位であると考えられる。変異体研究では、SPDとCoA分子に囲まれた酸性残基の変異体は酵素活性を大きく減少させたことから、アロステリック部位に結合しているSPD分子が、酸性領域を通ってアセチルCoAのアセチル基へ向かい酵素反応が進むと考えられた。 本年度は次の実験を行った。PotA結晶を用いてSPring-8(シンクロトロン放射光施設)にてX線回折実験を行ったところ、2.5A分解能のデータを取得することに成功した。さらに、SeMetPotA結晶においても同様の実験を行ったところ、2.6 A分解能のデータを得ることができた。現在、構造解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、PotA-SPD複合体結晶とその位相問題を解決するために、SeMetPotA結晶を取得し、SAD法による解析手段によって立体構造を進めている。PotAの完全なモデル構築には至っていないものの初期位相から2量体構造は観察できている。
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今後の研究の推進方策 |
PotAではセレノメチオニンで標識したPotA結晶を用いたSAD法により、PotA-SPD複合体構造解析を行う。PotAは、SPD優先取り込み系のエネルギー供給に関与するATPaseであり、SPDがATPase活性を阻害することが分かっている。構造解析によって、SPDによる阻害活性メカニズムを解明していくことを目指す。また、SATにおいて、オリゴマー状態の離合集散の主な原因が、細胞内のSPDの濃度変化に起因するのかどうかを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
高知大学での新しい研究室の立ち上げにともない、実験ができない状況が生じたため。精製サンプルの取得、結晶化およびX線回折実験、構造解析に使用する予定である。
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