研究課題/領域番号 |
16K07271
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
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研究分担者 |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
吉原 明秀 香川大学, 国際希少糖研究教育機構, 准教授 (40548765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 単糖異性化酵素 / D-アルロース 3-エピメラーゼ / ヘキソキナーゼ / 希少糖 / 酵素・基質複合体 / D-allulose / D-allose |
研究実績の概要 |
今年度は、D-アルロース(D-プシコース)の生産に有用な新規希少糖生産酵素として報告されたD-アルロース 3-エピメラーゼ(DAE)の基質複合体構造を決定した。基質となるD-フルクトースとD-アルロースのそれぞれの基質複合体を得ることができ、D-アルロースは糖環が開環した状態、D-フルクトースは一部環状構造が含まれている状態の構造が確認された。環状構造の基質と開環した線状構造の基質と結合している活性部位のアミノ酸残基は、側鎖が大きく動いている可能性が示唆されたことから、糖環の開環機構も含めたDAEの触媒反応機構を解明するため、変異酵素を構築し、変異酵素を用いた基質複合体構造の解析を進めている。DAEのリガンドフリーの構造の座標情報については、Protein Data Bankに登録し、論文投稿中である。 また、希少糖関連酵素として、研究協力者のグループが酵素の諸性質を報告しているD-アロースを基質とするイネ由来ヘキソキナーゼの結晶構造解析を行った。ヘキソキナーゼはD-グルコースを基質としてD-グルコースの6位をリン酸化する酵素であるが、イネに存在する10種のヘキソキナーゼのうち、ヘキソキナーゼ6(OsHXK6)はD-アロースにより誘導生産され、D-アロースを基質としてD-アロース6リン酸を生成する。D-アロースで処理をしたイネは、白葉枯病に対する抵抗性が見られることが報告されていることから、希少糖D-アロースが病原抵抗性を向上させるメカニズムに関わる酵素を解析することは興味深い。今年度はイネ由来ヘキソキナーゼ6とD-グルコースとの基質複合体構造を決定し、研究報告を行った。ヘキソキナーゼは基質との結合によりopen型からclosed型の構造をとることが報告されているが、D-グルコースが結合したOsHXK6も、基質を包み込んだ閉じた構造を示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基質複合体が結合した希少糖生産酵素D-アルロース 3-エピメラーゼの構造も得られ、概ね順調である。得られた複合体構造では、活性部位の一部のアミノ酸残基が揺らいでいる可能性があり、明確な電子密度を得るために、変異酵素を用いた構造解析を進めている。変異酵素の基質複合体は高分解能のデータを目指していることから、JAXAが行っている微小重力環境タンパク質結晶化に今年度から次年度に向けて参加している。 また、研究協力者のグループから希少糖関連酵素としてD-アロースを基質とするイネ由来ヘキソキナーゼの提供があり、結晶化および構造解析に成功した。D-アロースとの複合体構造は得られなかったが、D-グルコースとの複合体構造を決定することができた。D-グルコースとの複合体構造は、弱いながらも三量体構造を示したことは興味深い。細胞内においては、主として単量体構造が存在しているが、条件によっては、弱い相互作用により三量体構造を一時的にとることもあるのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
明確な電子密度を得るため、D-アルロース 3-エピメラーゼの変異酵素を用いた希少糖との複合体構造解析を進めている。国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)を利用した宇宙実験の参加も含め、分解能の高い複合体構造解析を目指し、基質の糖環開環機構も含めた触媒反応機構の解明を行っていく。また、安定性の高いD-アルロース 3-エピメラーゼの情報をもとに、これまでに報告してきた希少糖生産酵素をターゲットとした安定化の検討や、新しい希少糖関連酵素の構造解析を行い、分子設計のための構造情報を蓄積していく。
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備考 |
香川大学総合生命科学研究センター分子構造解析研究部門ホームページ http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~xraylab/ http://www.med.kagawa-u.ac.jp/~xraylab/report/kaken
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