研究課題/領域番号 |
16K07272
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小森 博文 香川大学, 教育学部, 准教授 (30382261)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 酵素 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒスタミン合成酵素(HDC)の立体構造を基に、医薬品としても応用可能な新規阻害剤を開発するために、X線結晶構造解析法によってヒスタミン合成反応の分子機構を原子レベルで解明することを目的としている。ヒト由来酵素の活性に関わる重要な変異体や阻害候補化合物複合体のX線結晶構造解析をおこなう他に、食中毒などの健康被害も報告されているヒスタミン産生菌の酵素についても構造解析を進めることによって、ヒスタミン合成酵素の働きを特異的に抑制する新規阻害剤開発の基盤となる構造化学的な研究を推し進める。 本年度は、スペインのマラガ大学Sanchez教授から提供されたヒスタミン類似体(aminooxy analog)と酵素の複合体のX線回折データの処理を進めた。また、HDCの基質認識機構を明らかにするため、ドーパミン合成酵素(AroDC)と活性部位を比較し、影響のあるアミノ酸残基を検討した。その結果、それぞれの活性部位に存在するセリン(S)354番(HDC)/グリシン(G)354番(AroDC)、セリン(S)304番(HDC)/ヒスチジン(H)302番(AroDC)が基質アミノ酸の側鎖領域を認識するのに重要であると予想された。そこで、ドーパミン合成酵素の点変異体G354S及び二点変異体G354S・H302Sの活性測定及び構造解析にむけた試料調製をおこなった。これまでに、大腸菌の発現系を利用して大量発現を行い、Niアフィニティークロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーによって、純度の高いAroDCの野生型(WT)及び変異体G354S、G354S・H302Sの得ることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ヒスタミン合成酵素(HDC)の立体構造を基に、医薬品としても応用可能な新規阻害剤を開発するために、X線結晶構造解析法によってヒスタミン合成反応の分子機構を原子レベルで解明することを目的としている。これまでにヒト由来HDCのX線結晶構造解析を行い、その阻害剤の1つであるヒスチジンメチルエステルを含む構造を明らかにしている。本年度は、食中毒などの健康被害も報告されているヒスタミン産生菌の酵素についても構造化学的な知見をえるために、結晶化を進めてきた。しかし、市販の結晶化キットを利用したスクリーニングを行っているが、X線回折実験に適した結晶は得られていない。また、ヒト由来HDCの基質認識機構を明らかにするため、類似の酵素であるヒト由来ドーパミン合成酵素(AroDC)の野生型と変異体2種類を精製し、純度の高い試料を得ることに成功した。今後、結晶化スクリーニングを行い、X線結晶構造解析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、ヒスタミン合成酵素(HDC)の立体構造を基に、医薬品としても応用可能な新規阻害剤を開発するために、X線結晶構造解析法によってヒスタミン合成反応の分子機構を原子レベルで解明することを目的としている。本年度は、ドーパミン合成酵素(AroDC)の野生型と変異体2種類の精製することに成功した。今後、結晶化スクリーニングを行い、X線結晶構造解析を進める予定である。ドーパミン合成酵素とヒスタミン合成酵素の活性部位を比較し、それぞれの酵素の基質認識機構を解明する。ヒスタミン産生菌の酵素については、現在、結晶化スクリーニング中であるが、精製法を改良し、より結晶化に適した試料を調整する。また、スペインのマラガ大学Sanchez教授から提供されたヒスタミン類似体(aminooxy analog)と酵素の複合体のX線回折データ処理を進め、X線結晶構造解析を行う。これまでに解析されている基質類似体阻害剤(ヒスチジンメチルエステル)と活性部位の比較検討を行うことで、ヒスタミン合成反応の阻害機構を原子レベルで解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに達成することのできなかった結晶化実験を行うため、次年度にも蛋白質の精製と結晶化実験を行う。
|
次年度使用額の使用計画 |
X線結晶構造解析に必要なタンパク質試料の精製・結晶化実験に必要な試薬を購入する
|