研究課題
本研究は、ヒスタミン合成酵素(HDC)の立体構造を基に、医薬品としても応用可能な新規阻害剤を開発するために、X線結晶構造解析法によってヒスタミン合成反応の分子機構を原子レベルで解明することを目的としている。ヒト由来酵素の活性に関わる重要な変異体や阻害候補化合物複合体のX線結晶構造解析をおこなう他に、食中毒などの健康被害も報告されているヒスタミン産生菌の酵素についても構造解析を進めることによって、ヒスタミン合成酵素の働きを特異的に抑制する新規阻害剤開発の基盤となる構造化学的な研究を推し進める。本年度も、X線構造解析に適した結晶作成を試みたが、成功していない。しかし、他のビタミンB6酵素(アルデヒド合成酵素)との関係性が見つかった触媒残基であるチロシンの役割について、その役割を明らかにするためにY334F変異体の活性測定を行った。その結果、ヒスタミンの代わりに、活性酸素を生成することが確認された。これは、脱炭酸後の反応中間体であるカルボアニオンにプロトンの代わりに、溶液中の酸素分子が反応していると考えられる。これは、他のビタミンB6酵素(アルデヒド合成酵素)で報告されているように、ヒスタミン合成酵素でも、アミンの代わりにアルデヒドを合成することを示唆するものである。ヒト由来ヒスタミン合成酵素のX線構造解析で明らかとなった触媒残基のチロシンが、他のビタミンB6酵素でも共通のはたらきをしていると予想される。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 83 ページ: 1315~1318
10.1080/09168451.2019.1606695