研究課題/領域番号 |
16K07274
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大寺 秀典 九州大学, 医学研究院, 助教 (40380612)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / クリステ / アポトーシス |
研究実績の概要 |
DNA損傷や抗癌剤の刺激に応じて、ミトコンドリアは分裂し、クリステ内に貯留されるチトクロムCを放出してアポトーシスが開始します。DRP1が細胞質から分裂面へ移行してミトコンドリアは分裂します。哺乳動物細胞には3種のDRP1外膜レセプター(Mff、MiD49、MiD51)が知られています。 最近、申請者はアポトーシス誘導時、Mffとは異なり、MiD49/51がDRP1と協調してクリステ再編を引き起こし、チトクロムC放出に働く確証を得ました。本研究ではこの研究をさらに進め、アポトーシスにおけるミトコンドリア形態変化の生理的意義とその分子基盤の解明を目指します。 アポトーシスにおけるミトコンドリア構造の変化を解析するためアポトーシスに耐性を示すBax/Bak二重欠損細胞(DKO細胞)を作成しました。アポトーシス刺激によるミトコンドリア形態変化を野生型細胞とこの耐性細胞とで比較した結果、Bax/Bak-DKO細胞ではアポトーシス刺激によるミトコンドリア形態変化もチトクロムC放出も惹起されませんでした。さらにクリステ構造の再編も生じないことから、アポトーシス誘導時におけるミトコンドリア構造変化とそれに伴うチトクロムC放出にはBax/Bakが必須であることを明らかにしました。 BaxとBakのどちらが重要な働きを持つかを明らかにするためそれぞれ単独の欠損細胞を作成して同様の解析を行ったところ、いずれの細胞もアポトーシス刺激に対してミトコンドリア構造変化が部分的に誘導されそれに伴うチトクロムC放出が一部観察された。このことからアポトーシス誘導時におけるミトコンドリア構造変化にはBax/Bakにより形成される外膜孔により細胞質に放出されるミトコンドリア内因子が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Drp1により実行されるミトコンドリアの分裂にはMiD51によるものとMffにより制御される2種が存在する。このうちMiD51により制御される分裂のみがアポトーシスにおけるクリステ構造変化に関与していること我々は既に報告している。アポトーシスの際に細胞質に放出されるシトクロムCはクリステ内部に貯留されている。近年、クリステの形成にはMICOS複合体と呼称されるタンパク質複合体が関与することが明らかにされつつあるが、そのなかでもMic60が主要な構成因子として考えられている。Mic60特異的なsiRNAにより発現抑制してもはチトクロムC放出には影響が見られなかった。クリステは外膜とクリステジャンクション(CJ)と呼ばれる構造によって繋がっている。CJ構造形成に関わる因子としてOPA1、ROMO1などが報告されているが、特異的siRNAによる発現抑制によりこれらの因子がアポトーシス誘導時におけるチトクロムC放出に関与することを明らかにした。 アポトーシス誘導時に引き起こされるミトコンドリア構造変化を解析するためにはその比較対象となる細胞株が必要である。すなわち確かにアポトーシス刺激により引き起こされる構造変化であるかである。これまでにBax/Bak二重欠損細胞を作成して確かに本細胞ではアポトーシス刺激により誘導されるミトコンドリア形態変化が生じないことを確認することができた。アポトーシスを誘導すると細胞質からBidと呼ばれるタンパク質がミトコンドリアへと移行してBax/Bakを活性化する。Bax/Bak-DKO細胞でも正常細胞と同様にBidのミトコンドリア移行が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
Bax/Bak-DKO細胞のセミインタクト細胞を作成し、アポトーシスを誘導した正常細胞の細胞質画分とを反応させてクリステ構造変化が誘導されるかどうか電子顕微鏡により検討する。もしクリステ構造変化が誘導されたら細胞質画分からその誘導因子を生化学的に同定する。もし誘導されなかった場合には、Bax/Bakの不活性化変異体を入れ戻した変異細胞を作成してミトコンドリア外膜ポア形成とクリステ構造変化の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等の性能向上により必要とする試薬の節約が可能となったため。 また予定していた出張を諸事情により控えたため。
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