研究課題/領域番号 |
16K07276
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池水 信二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (60333522)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構造生物学 |
研究実績の概要 |
ヒトはウイルスなどの侵入に対してナイーブヘルパーT(Th0)細胞はTh1細胞に分化して、マクロファージや細胞障害性細胞を活性化してウイルスや細胞内抗原の除去を行う。インターロイキン(IL)-27は、Th0細胞からTh1細胞の誘導初期に関わる分子でる。IL-27はfour helix bundle構造をもつp28と2つのfibronectin type ⅢドメインをもつEpstein-Barr virus induced gene 3 (EBI-3)からなる。IL-27の受容体は、特異的なWSX-1とIL-6などと共有されるgp130からなる。本研究の目的は、IL-27/WSX-1/gp130複合体の結晶構造を解明し、Th1細胞分化機構を構造生物学的に解明することである。 p28とEBI3はジフルフィド結合を介さない二量体を形成しており、精製中に不安定であったため、リンカーでつないだ一本鎖(s)IL-27のコンストラクトを作成して、動物細胞を用いて発現させた後、精製を行った。WSX-1は大腸菌を用いて発現させて精製を行った。精製したsIL-27とWSX-1を混ぜた後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより複合体として精製を行った。sIL-27/WSX-1複合体の結晶化条件の検索を行ったが、結晶の形成は確認出来ていない。gp130 のドメイン(D)1からD3までを昆虫細胞を用いて発現させた後、精製sIL-27/WSX-1複合体と混合して、sIL-27/WSX-1/gp130複合体として精製を試みたが、gp130(D1-D3)はsIL-27/WSX-1複合体と結合しなかった。現在、gp130とWSX-1のドメインを増やして三者複合体を調製することを試みているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-27は、p28とEBI3を共発現させた後精製を行ったが、試料が不安定であった。そのため、リンカーで繋いだ一本鎖試料として発現させた後、精製を行なった。sIL-27は収量は低かったが、動物細胞により発現させた後、精製することに成功した。 WSX-1は大腸菌で発現させた後、精製することに成功している。精製したWSX-1はsIL-27と複合体として精製することに成功しており、sIL-27/WSX-1複合体として結晶化条件の検索を進めているところである。 gp130については、昆虫細胞を用いてD1からD3までの領域の発現系を構築して、精製することに成功した。精製したgp130とsIL-27/WSX-1複合体を混ぜて、sIL-27/WSX-1/gp130複合体としての精製を試みたが、成功に至っていない。現在、WSX-1 (D1-D3)のコンストラクトと、gp130 (D1-D4)のコンストラクトの作成を行い、発現系の構築を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
WSX-1については、単体試料の精製に成功しており、結晶化条件の検索を進めてきたが、未だ結晶の確認に至っていない。今後、更に結晶化条件の検索を進め、単独WSX-1の結晶化・構造解析を進める予定である。 sIL-27/WSX-1複合体については、調製方の確率に成功しており結晶化を進めているが、未だ結晶化に成功していない。今後、さらなる条件検索を行い、結晶化・構造解析を進める。構造解析することにより、sIL-27とWSX-1の認識機構を原子レベルで詳細に解明する。また、sIL-27の発現量が低いので、発現系の改良も行い、より収量の高い調製方の確立を目指す。 sIL-27/WSX-1/gp130複合体の調製については、現在のコンストラクトであるgp130 (D1-D3)ではsIL-27/WSX-1 (D1-D2)複合体に結合しなかったので、gp130 (D1-D4)およびWSX-1 (D1-D3)の発現系の調製を行い、sIL-27/WSX-1/gp130複合体の調製を行う。sIL-27/WSX-1/gp130複合体を精製した後、結晶化条件の検索を進め、構造解析を行う。得られた三者複合体の構造を基に、IL-27と2つの受容体WSX-1とgp130の結合様式およびシグナル伝達機構を解明して、Th1細胞分化機構を構造生物学的に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費は計画通りに執行したが、端数が出たため19,409円繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目である平成29年度の物品費に平成28年度分の繰り越し分を加えて使用する予定である。
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