研究課題
ジストロフィン糖タンパク質複合体は筋肉や脳神経組織など多くの組織で重要な糖タンパク質複合体であり、細胞内骨格と細胞外マトリックスを物理的に繋げる 働きをしている。αジストログリカンはその複合体のサブユニットであり、細胞表面に局在している。αジストログリカンに付加されたO-マンノース型糖鎖が細 胞外マトリックスタンパクであるラミニンと直接相互作用し、そのO-マンノース型糖鎖の形成不全が先天性筋ジストロフィーを引き起こす。当該年度での研究で は、これまでのO-マンノース型糖鎖の形成に関わるFukutin-related protein (FKRP)の構造機能解析を基に変異体を用いた機能解析を行うことで構造機能相関を明らかにした。FKRPはFuktinと合わせて core M3と呼ばれる糖鎖にリン 酸リビトールをタンデムに負荷する糖転移酵素であり、哺乳類において、リビトールを利用する唯一の酵素である。哺乳類細胞発現系を用いてFKRPを大量精製及 び結晶化を行い、FKRPの高分解能立体構造を決めるとともに、基質との複合体構造も合わせて決定してきている。FKRPは一般的な糖転移酵素とは異なり、リン酸ヌクレオ シド転移酵素と似た構造を取っていた。そのため、一般的な糖転移酵素とは異なる進化の過程を経て生まれていることが分かった。基質との複合体構造解析及び 変異体を用いた機能解析の結果、FKRPはリン酸ヌクレオシド転移酵素とも異なる基質認識機構を獲得することで、core M3糖鎖を特異的に認識し、リン酸リビ トールを転移することを明らかにできた。本研究結果は国内外の学会で発表を行い、the 11th International Symposium on Glycosyltransferases(GlycoT2018)においてはBest poster awardを受賞することができた。
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Trends in Glycoscience and Glycotechnology
巻: 30 ページ: SE75~SE88
https://doi.org/10.4052/tigg.1736.1SE
https://www2.kek.jp/imss/news/2018/award.html