研究課題/領域番号 |
16K07285
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新海 暁男 国立研究開発法人理化学研究所, 横山構造生物学研究室, 先任研究員 (10391989)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CRISPR-Cas / Cmr複合体 / 超分子複合体 / リボヌクレオタンパク質 / リボヌクレアーゼ / 低分子RNA / 無細胞タンパク質合成法 |
研究実績の概要 |
CRISPR-Casシステムは、多くの細菌が持つ獲得免疫システムで、ウイルスやプラスミド由来のDNAやRNAなど、細胞外から侵入してくる核酸を分解する装置である。真核生物における獲得免疫システムの原型ともいえる本システムの機構を解明することは生命システムやその進化を考察する際に重要である。本研究課題は、比較的多くの種類のCRISPR-Casシステムを持つ高度好熱菌Thermus thermophilus株をモデル生物として用い、本システムを構成している超分子複合体、および、それらに関連している機能未知タンパク質群の高分解能な立体構造を解析し、一つの細胞における獲得免疫システムを体系的に理解することを目的としている。本年度は、6種類(11分子)のタンパク質サブユニットと1分子の低分子一本鎖RNAとから構成されているCmr複合体の試料調製を試みた。天然型Cmr複合体は、結合しているRNAの塩基配列が分子によって必ずしも一致しておらず均一性が低いので高分解能な立体構造を解析する試料としては最適ではない。そこで我々は、均一なRNAを持つ複合体の再構成を試みた。その結果、大腸菌無細胞タンパク質合成法を利用して、より均一性の高い複合体を再構成することができた。さらに、あるタンパク質サブユニットを欠いたサブ複合体を合成することもできた。これらの再構成型複合体は、天然型複合体が持つRNA分解活性を持っていた。現在、立体構造上も、より均一性の高い複合体を得るために、再構成法の改良に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は、本年度中にCmr複合体の均一な試料を得て結晶化・構造解析を実施する予定であったが、構造解析の実施に至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、均一なCmr複合体の調製、構造解析を試みる。電子顕微鏡の進歩により、最近、クライオ電子顕微鏡法を用いて、X線結晶構造解析と同等の高分解能でタンパク質の構造を解析した例が報告されているので、本研究課題を実施するに当たってもクライオ電子顕微鏡法を試みる。Cmr複合体以外のCRISPR-Casシステム関連タンパク質の試料調製、構造解析にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質の結晶化・構造解析に必要な試薬類を調達しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
タンパク質試料の調製、均一性の評価、および、構造解析を行うための費用に充当する予定である。
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