研究課題/領域番号 |
16K07290
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
二井 勇人 東北大学, 農学研究科, 准教授 (90447459)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膜内切断プロテアーゼ / 認知症 / 酵母 / 酵素 / 脳・神経 |
研究実績の概要 |
膜内でタンパク質を限定分解する膜内切断プロテアーゼは膜貫通領域に活性中心を持つため、精製と活性の評価が難しく、酵素機能・機構が明らかではない。本研究では、認知症の原因となるアミロイドβ(Aβ)ペプチドを産生するγセクレターゼ複合体と、そのモデルとなる単量体膜内切断プロテアーゼ(ロンボイド等)について、活性調節や基質認識に必要な領域を同定し、詳細な酵素学的性状から、膜内切断プロテアーゼの基質導入機構を解明することを目的とした。研究代表者は、膜内切断プロテアーゼのうち、ヒトγセクレターゼ複合体を酵母において再構成することに成功し、試験管内でγセクレターゼ活性を測定できる系を世界で初めて開発している。この系を用いてヒトγセクレターゼの詳細な酵素学的性状・複合体内のサブユニット構成が活性に及ぼす影響、リン脂質による活性の変化など、酵素としての基本的な性質を明らかにしている。酵母内に再構成したγセクレターゼの切断活性は、酵母の生育を指標に評価することも可能であるため、スクリーニング系としても有用である。 平成29年度には、γセクレターゼの触媒サブユニットプレセニリン(PS1)と、調節サブユニットAph1に見出したプロテアーゼ活性を上昇させる活性化変異について解析を進めた。酵母膜画分を用いた酵素学的解析と哺乳類細胞を使った解析から、PS1の活性化変異によりAβのトリミングが進み、認知症発症に関わる長鎖Aβが減少すること、γセクレターゼの基質認識部位のコンホメーションが変化することを明らかにした。この成果は現在投稿中である。また、Aph1の活性化変異についても、同様の手法で解析中である。この成果はγセクレターゼ複合体をターゲットとした認知症の治療戦略において重要な知見であり、毒性の高い長鎖Aβ42の生成を減少させるγセクレターゼのモジュレーターの開発に道を開くものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施を予定していた1)酵素学的解析による反応機構の解明、2)哺乳類細胞を用いたγセクレターぜ活性調節機構の解析、また、初年度から引き続いて実施していた、3)γセクレターゼの変異と活性調節タンパクの同定と4)ロンボイドとSite-2プロテアーゼの活性評価系の構築について、達成度を自己評価する。 1)酵母γセクレターゼ発現系を用いた解析から、γセクレターゼの活性化変異体を発見し、薬剤の開発においても重要な、変異が集中する領域の情報が得られた。このうちPS1の活性化変異体について、Substituted Cystein Accesibility Method(SCAM)を用いて解析した。基質結合領域である第1膜貫通領域(TM1)の親水性領域の構造が変化していることが明らかになり、活性化変異によるγセクレターゼのコンホメーション変化を捉えることに成功した。 2)哺乳類細胞を用いた解析については、PS1活性化変異についての解析を平成28年度から前倒しして開始していた。PS破壊胚性線維芽(MEF)細胞にPS1活性化変異体を導入して生成されるAβを解析した結果、Aβのトリミングが進み、長鎖Aβが減少することを明らかになった。PS1活性化変異の解析は、1)の酵素学的解析結果とまとめて、原著論文として投稿中である。 3)酵母を用いたスクリーニングでは、γセクレターゼの活性を上昇させるPS1とAph1の変異体を同定した。一方、活性を調節する新規タンパク質については、陽性の同定には至らなかった。 4)ロンボイドとSite-2プロテアーゼの活性を評価するため、転写因子Gal4にそれぞれの基質SpitzもしくはSREBP2を融合した人工基質を酵母に導入した。Galレポーター遺伝子であるβガラクトシダーゼ活性による定量的解析から、酵母ロンボイドとヒトSite-2プロテアーゼによる切断を検出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果をさらに発展させ、以下の解析を行う。 1)これまでに、プレセニリンPS1とAph1から、γセクレターゼを活性化する変異を同定した。これらの変異体の活性を哺乳類細胞においても確認するため、マウス胚繊維芽(MEF)細胞(プレセニリン二遺伝子ノックアウト細胞、Aph1三遺伝子ノックアウト細胞もしくはヒト胚腎臓細胞(HEK293)に導入して、変異が基質切断におよぼす影響を明らかにする。PS1変異体の一部については、既に実施済みであり、Aph1の変異体の解析を進める。 2)プレセニリンPS1とAph1について、立体構造情報をもとに基質が導入される経路として予想される各膜貫通領域に変異を導入し、活性を評価する。変異のデザインにおいては、酵母のスクリーニングから見つかっている活性化変異の位置情報を有効活用する。特に、第9膜貫通領域の可動性、第1膜貫通領域の可動性を変化させる各種変異の検討を行う。 3)ロンボイドとSite-2プロテアーゼの活性評価系は、酵母の内在性のプロテーアーゼによるバックグラウンドでの切断が大きく、生育による活性の評価ができない状況で、アッセイ系としては、未完成である。酵母内の遺伝子操作(内在性プロテアーゼ遺伝子の破壊)等により、活性評価系を最適化する。
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