本最終年度は、さらなるAcnXの性質や反応触媒機構の解明を目的としてX線結晶構造解析を行った。大腸菌の系を用いて調製したアグロバクテリウム由来AcnXについて結晶化に成功し,得られた結晶から大型放射光施設SPring-8にて回折データを収集した。セレノメチオニンを利用したSAD法により位相を決定し,最終的に1.6 Å分解能での構造決定に成功した。予想外なことに、一次構造も基質構造も全く類似点がないのに、AcnXの立体構造は既知のアコニターゼ酵素と驚くほど似ていた。一方で、既知のアコニターゼ酵素が活性中心に[4Fe-4S]クラスターを保持しているのに対し,AcnXには予想外にも[2Fe-2S]クラスターが存在することが明らかになった。また、他のアコニターゼとの比較からAcnXのS70が塩基触媒としてC3LHypのα-プロトンを引き抜く役割を担うことが示唆された。さらに,AcnXのSer70Ala不活性変異体とC3LHypの共結晶を作製し,C3LHyp結合型AcnXの結晶構造を2.0 Å分解能で決定した。C3LHypのα-炭素はAla70の近くに位置し,3位ヒドロキシ基は[2Fe-2S]クラスターの鉄原子に配位していた。以上のことから,AcnXのS70によりC3LHypのα-プロトンが引き抜かれ,3位ヒドロキシ基が[2Fe-2S]クラスターの鉄原子の一つに移る,という反応触媒機構が示された。
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