研究課題
本年度は、引き続き次の5つの遺伝子群を中心に解析を進めた。1)先天性グリコシル化異常症CDGの原因遺伝子DPAGT1と関連遺伝子、2)GPIアンカー型タンパク質で配偶子幹細胞の維持にかかわる複数の遺伝子(不妊症の原因遺伝子候補である)、3)アセチルCoAトランスポーター遺伝子AT-1(遺伝性痙性対麻痺や銅・鉄代謝の異常症他の原因遺伝子)、4)ヒトのO157感染モデルである、O157の毒素の受容体(Gb3)を発現させた線虫で感染時に変動する遺伝子群、 5)コンドロイチン合成酵素の機能阻害による異常に関わる遺伝子群。研究の結果、阻害時にDPAGT1と同様の表現型を示す「N型糖糖鎖修飾された蛋白質」遺伝子をスクリーニングし、5つの遺伝子(ribo-1, stt-3, vha-19, ptc-1, ptc-2:CDG遺伝子のoligosaccharyltransferase遺伝子2種、同定されたばかりのCDG遺伝子であるV-ATPase遺伝子、2種のpatched遺伝子)を発見した。配偶子幹細胞ニッチの維持に重要な遺伝としては幹細胞ニッチ維持細胞でだけ遺伝子機能を阻害して、F57F5.3/4の他、F54E2.1、R01B10.4(PGAP3)を同定し、ラフト形成の幹細胞ニッチ維持への重要性を見出した。AT-1欠失変異株での脂肪滴の減少をヒントに脂質組成の変化を質量分析で調べ、PC, PE及びそのlyso体の有意の変化を確認、脂質代謝経路でのAT-1の意義を明らかにした。DNAマイクロアレイを用いてO157毒素効果のヒト化線虫での解析を進め、RT-PCRによる確認結果をもとに、自然免疫系の変動を見出し、ヒトの神経症状発生のモデルとなる結果を得た。コンドロイチン合成についてはRNA-seqやChip-seqのデータ解析から関連する転写因子を同定して遺伝子制御ネットワークを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究している各糖鎖遺伝子については、ほぼデータの収集を終え、線虫を用いた糖鎖遺伝子による糖鎖難病モデルの構築の目的は、果たしつつある。実際、それぞれ論文投稿中(2編)あるいは投稿準備中(2編)となっている。線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBについては、研究データの著作権処理のため、自前のサーバーによる公開を準備しているが、セキュリティーの設定を十分行うためと、コンピューターの設定条件を改変したため遅れているので、内容のアップデートを含めて着実に実施していく予定である。
論文投稿とそれにともなう追加実験、および線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBの改訂と自前サーバーによる公開をすすめていく。最終年度であるので、研究成果のまとめと公開(講演や論文発表、インターネットでの紹介など)を行い、今後のより多くの研究者による研究のスタートの基盤とする。
論文投稿中で審査中のため、予定した論文掲載料などを支払わなかったため。
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Glycoscience 2013-2017 in Commemoration of the 25th Anniversary of Mizutani Foundation for Glycoscience
巻: なし ページ: 66-68
http://seibutsu.biology.kyushu-u.ac.jp/%7Enomura/index.html
http://glycostationx.org