研究課題
本年度は前年度に引き続き、5つの遺伝子群を中心に解析を進め論文投稿し、追加実験を行って先天性グリコシル化異常症CDGの原因遺伝子DPAGT1とその関連遺伝子に関する論文を公表した (Kanaki et al. Glycobiology 2018)。また日本の糖鎖研究のロードマップ(「未来を創るグライコサイエンス―我が国のロードマップ―」の線虫C. elegansに関する項目を執筆し、本研究成果をもとに、線虫C. elegansを用いた糖鎖機能の解析がヒトの疾患の解明に大きく寄与することを強調し、線虫糖鎖研究のロードマップを示した。日本語版はすでに出版済みであり、英語版が2019年6月にSpringer-Nature社より出版される予定である。GPIアンカータンパク質が配偶子幹細胞の維持に関わる論文については投稿して現在改訂作業を行っている。またアセチルCoAトランスポータ遺伝子AT-1(遺伝性痙性対麻痺や銅・鉄代謝異常症である低血清銅症などの原因遺伝子)とコンドロイチン合成酵素遺伝子についての論文については作成中である。さらにヒトのO157感染モデルであるヒト化線虫(志賀毒素のレセプターであるスフィンゴ糖脂質Gb3を腸で発現している)のDNAマイクロアレイ解析の結果、毒素を与えると特異的に線虫の嗅覚に関連する神経遺伝子群の変動が起こることが判明した。この成果をもとに共同研究者が志賀毒素を投与したウサギやマウスの嗅球にGb3やその合成酵素の存在を世界で初めて明らかにし、さらにヒトのO157患者を含む嗅球の解析をおこない、アポトーシスとの関係や遺伝子ネットワークの解明を含めた研究成果の論文を投稿準備中である。また糖鎖遺伝子データベースCGGDBについては、著作権処理をCC by SAで公開するための手続きを始め、現在進行中である。
4: 遅れている
論文投稿にともなう追加実験のため論文の公表が遅れた。またO157のモデルシステムについてはDNAマイクロアレイの解析によって明らかになった本年度の革新的発見に伴い、追加実験と論文の全面的改訂を行っているため、研究に予想外の遅れを生じている。
投稿中、投稿準備中の論文の公表を急ぐ。またO157の論文についてはヒトの神経系の病変とのかかわりを示唆するデータも得つつあるため、画期的な論文として発表の準備を続ける。また線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBについては、本研究成果を含めたデータベースとして改訂する作業を本年度中に完了する。
研究の遅延と論文査読結果への対処のため、論文投稿料・英文校閲料金・追加実験費用など予定していた支出を次年度に使用することになったため。本年度中に追加実験や論文の査読者からのコメントなどへの対応を終え、研究成果の論文発表を終える予定である。
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Glycobiology
巻: 29 ページ: 163~178
10.1093/glycob/cwy104
https://jcggdb.jp/cggdb/
http://glycostationx.org/