研究課題
「研究計画・方法」のうちAでは、グラム陽性好熱菌由来のシトクロムbd型酸化酵素分子について、3つのヘムに対する計5つの配位子、2つのプロトンチャネル候補(H+イオンが通ると考えられる通路の一連のアミノ酸残基群、酸素分子O2が通る候補トンネルの周囲にあるアミノ酸残基などを、我々の新規立体構造の中で推定し、それらを置換するためのPCRプライマーを順次設計し、最初の数対について実験を開始した。Bでは、グラム陽性アミノ酸生産菌由来のシトクロムbd型酸化酵素を精製し、結晶構造解析が専門のドイツの研究協力者に送付した。酵素分子単独と、基質メナキノールおよび各種阻害剤などとの共結晶で条件探索をしているが、そのうち1つの化合物について有力な条件が見つかった。Cでは、好熱菌bd型酵素の結晶構造に基づいて、情報工学的in silicoドッキングシミュレーション手法を適用した結果、数十万の化合物から数十の候補に絞る段階まで達した。
2: おおむね順調に進展している
「9. 研究実績の概要」で書いた3項目の方針のうちAについては、当初の期待よりやや進展が遅い。実験担当者の交代で、手技に上達するのを手間取っていることなどによる。とはいえ、もともと3年計画の1年目は準備段階なので、想定の範囲内である。Bでは、結晶化に適する条件を見出すタイミングとしては、当初見込みより進展が早い。とはいえこちらも構造のモデリングに至っているわけではないので、予断は許さない。Cは、研究協力者の計算機システムの空き時間を一部借用しているレベルであり、当該補助金の予算内で独自のシステムを占有できるほどの規模ではない条件を考えると、ほどほどの進展度と見られる。一方、「申請書」にも予告的に記載した結晶構造解析結果の論文が、本研究期間1年目にScience誌で出版されたことによる影響は大きく、国内外から共同研究の提案や示唆が寄せられており、密接に関連しながらも「申請書」段階では明確に書かなかった研究内容が今後進展する期待も高まってきた。
上述3項目のうちAについては、 実験担当者の熟練を期して、変異体作成を加速したい。Bについては、精製酵素標品を研究協力者にさらに提供し、順当な進展を図るとともに、これと密接に関連して、フランスから新たに電気化学的測定の専門家を研究協力者として得たので、その方面にも拡張したい。Cの新規抗菌薬探索については、上述のコンピュータシミュレーションの手法を進展させるとともに、大阪とオランダの研究者からそれぞれ別個に申し出のあったウェット実験の共同の提案や示唆も検討し進めたい。
ごく少額のため。
ごく少額のため、次年度分と合わせて使用する。
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Science
巻: 352 ページ: 583-586
10.1126/science.aaf2477.