研究課題/領域番号 |
16K07299
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
坂本 順司 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80175364)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シトクロム / 呼吸鎖 / アミノ酸生産菌 / 好熱性細菌 / グラム陽性菌 / 生体エネルギー変換 / 電子伝達系 / コリネバクテリウム |
研究実績の概要 |
「研究計画・方法」のうちAについては、バチルス科好熱性細菌Goebacillus thermodenitrificans K1041株のシトクロムbd型メナキノールオキシダーゼ分子について、ヘムb560、ヘムb595、ヘムdに対する計5つのリガンドと、水素イオン透過路の候補2本を構成する複数のアミノ酸残基などを、一昨年度我々自身が解明した原子レベルの立体構造の中で同定あるいは推定し、それらの部位特異的変異体遺伝子を設計し、実験を継続している。具体的には、PCRの増幅DNA断片をシャトルベクターに挿入して大腸菌で増やした。これをエレクトロポレーション法で本来の菌を宿主としてホモロガス-エキスプレションを試みている。Bについては、アミノ酸生産菌Corynebacteium glutamicumのやはりシトクロムbd型メナキノールオキシダーゼを精製し、膜タンパク質の結晶構造解析が専門のドイツの研究協力者の研究所への空輸を継続した。単独での結晶化の他に、各種阻害剤や基質メナキノールおよびその類似物質との共結晶も試みている上、関連するいくつかの物理化学的測定も、当該研究所内および研究所外ヨーロッパ内の別大学で行っている。Cについては、上述の立体構造に基づいたin silicoシミュレーションによる候補化合物の絞り込みに並行して、96穴プレートにおける大腸菌2株、好熱菌1株、アミノ酸生産菌3株、またそれらとは別のグラム陽性病原菌の近縁無毒モデル菌株の細胞培養とマイクロプレートリーダを用いたin vitroスクリーニングを、まずは既存の阻害剤を用いて開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9. 研究実績の概要」で書いた3項目の方針のうちAに関しては、変異体遺伝子の構築はある程度進んだが、好熱菌細胞の形質転換が難航している。実験担当者の交代で、手技の上達が遅れている。遺伝子工学分野に汎用的な大腸菌ではなく特殊な菌株であることが難点となっている。Bに関しては、昨年度に引き続き学内の別資金を獲得でき、実験担当者2名をドイツの研究所に派遣したことなど、一定の進展をみている。Cについては、昨年度の「進捗状況」にも書いたコンピュータシステムに関するリソース面の制約条件は続いているが、in vitroスクリーニング実験を先行して始められたことで、補うことができた。 本研究期間の初年度に、シトクロムbd型オキシダーゼの結晶構造の論文をScience誌で出版できたことによる好影響は続いており、オランダの研究協力者の下へもやはり別の実験担当者2名を派遣して成果を上げることができた(だだし論文発表はまだ)。申請書には明確に書かなかった方針だが関係は深いので、Aの遅れに対する広い意味での補いになったと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
Aに関しては、離任した前任者への問い合わせなどで実験の促進を図る。Bに関しては国際協力を、Cに関しては学内協力を、それぞれ順調に継続する。派生的な展開としては、「進捗状況」の第2段落に書いたオランダの研究室との協力とともに、大阪の研究室との協力も有望なので、当初計画には入れなかったが密接に関連するテーマとして推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ごく少額のため。次年度分と合わせて使用する。
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