「研究計画・方法」のうちAについては、バチルス科好熱性細菌Goebacillus thermodenitrificans K1041株のシトクロムbd型メナキノールオキシダーゼの結晶構造を解明し、原子レベルの精密構造を本研究期間に学術論文として公表するに至った。ヘムb560、ヘムb595、ヘムdに対する計5つのリガンドと、水素イオン透過路の候補2本を構成する複数のアミノ酸残基などを、解明した原子レベルの立体構造の中で同定あるいは推定し、それらの部位特異的変異体遺伝子を設計した。この設計に基づき、PCRの増幅DNA断片をシャトルベクターに挿入して大腸菌で増やした。これをエレクトロポレーション法で本来の菌を宿主として導入し、変異酵素発現を試みる段階に至っている。一方、その同じbd型オキシダーゼの精製標品をについて分光電気化学的測定を行い、3つのヘムの酸化還元電位についてユニークな特徴を見いだすことができた。 Bについては、アミノ酸生産Corynebacteium glutamicumのやはりムbd型オキシダーゼを精製し、同じくドイツの研究協力者の研究所への空輸を継続した。単独での結晶化の他に、各種阻害剤や基質メナキノールおよびその類似物質との共結晶も試みている上、関連するいくつかの物理化学的測定も、当該研究所内および研究所外ヨーロッパ内の別大学で行っている。 Cについては、上述の立体構造に基づくホモロガス-モデリングで他のグラム陽性病原菌のbd型オキシダーゼの構造モデルを構築した。これら好熱菌と病原菌の構造に対して、in silicoシミュレーションによる候補化合物の絞り込む段階に達した。
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