研究実績の概要 |
植物由来のポリフェノール類などが口に中で渋味感覚を引き起こすが、その詳しい仕組みの解明は殆ど行われていない。研究代表者らは、ポリフェノールの一種酸化カテキンが、感覚神経上のTRPA1とTRPV1を他のリガンドとは異なり緩徐に活性化し、特徴的なパターンの神経発火を引き起こすことを見出した。おそらくこの感覚神経活性化の仕組みが渋味感覚の分子機構と期待される。そこで、本研究では、渋味物質の種々のポリフェノール類が如何にTRPチャネルを活性化し、どう感覚神経を発火させ、それがどう個体行動に反映されるか解析して、渋味感覚の分子機構を解明する。 1年目の今年度は、渋味感覚を引き起こす代表的なポリフェノール類のタンニン酸、クロロゲン酸、エラグ酸を後根神経節培養細胞(DRG)、TRPA1あるいはTRPV1発現細胞に作用させ、主にCa2+イメージング法で細胞応答とその特異性を検討した。結果、マウスのDRGは濃度依存的にタンニン酸に応答し、この応答はTRPV1阻害剤SB-366791により抑制された。次に、HEK細胞にヒト, ラット, ニワトリ, ガラガラヘビ, ゼブラフィッシュのTRPV1(順にhTRPV1, rTRPV1, cTRPV1, rsTRPV1, zTRPV1)を発現させ、Ca2+イメージング法で応答解析を行った。すると、hTRPV1, rTRPV1, zTRPV1で濃度依存的な比較的緩徐な応答が検出され、cTRPV1では高濃度のタンニン酸のみに顕著に応答が見られた。一方、rsTRPV1では応答が検出されなかった。そこで、rTRPV1とrsTRPV1の間でキメラチャネルを作り応答解析を行った結果、チャネル膜貫通部に責任部位がある傾向がみられた。一方、クロロゲン酸とエラグ酸については、DRGでは多少の応答が検出されたが、TRPA1とTRPV1の発現細胞では細胞応答が検出されなかった。
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