研究実績の概要 |
バクテリアトキシンRelEは、リホソーム中でmRNAを切断するエンドリボヌクレアーゼであり、アミノ酸飢餓に応答してタンパク質合成を阻害する役割を果たしている。その反応機構は、切断後のRNA断片の末端が2',3'-cyclic体であることから、切断反応に金属が関与しない一般酸塩基触媒機構が提案されている。しかし、既知構造から予測される重要残基の変異による活性損失が顕著でない等、未解明な点が残されている。本研究では、申請者らが決定した野生型RelEとリボソーム・mRNA複合体構造に基づいて、有効な変異体を設計し、反応メカニズムの詳細を明らかにしたいと考えている。 平成29年度は、構造の詳細比較から触媒機構への関与が新たに見出されたグルタミン酸(E45)の変異体を作成し、活性への関与を検討した。触媒残基として重要性が論じられているK57, Y88と距離が近いので、電荷や疎水性を考慮して、4種類の変異体(E45A, E45D, E45L, E45N)をpET11bベクターにクローニングし、BL21株及びKRX株を形質転換した。しかし、いずれもコロニーを得ることはできず、RelEの活性は野生型と変わらないことが示唆された。一方、RNA切断反応を解析するために、非変性条件下でのRelEの調製を検討した。これまで野生型RelEはアンチトキシンであるRelBと共発現させた後、厳しい変性条件に晒して乖離させ、続いて透析による巻き戻しを行っていた。生体内では、プロテアーゼによるRelBの切断が乖離を促すとされている。そこで、大腸菌BL21株の無細胞タンパク質合成系による発現を試すことにした。反応温度条件の検討、活性残機が集中しているC末へのタグの付加、大腸菌のアンチトキシンであるRelBの共存など、様々な手法を試したが、ほとんど何も合成できなかった。
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