研究課題/領域番号 |
16K07311
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鴫 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (20392623)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | tRNA / 硫黄 / 鉄硫黄クラスター / 酵素 / タンパク質合成 |
研究実績の概要 |
tRNAはタンパク質合成においてコドンとアミノ酸を結び付ける要であり、転写後に化学修飾を受け機能を発揮する。tRNAの硫黄修飾塩基はコドン認識や構造安定化などに必須である。本研究ではその生合成を担う硫黄修飾塩基の生合成機構の解明を目的としている。 これまでに、細胞内の硫黄化合物の生合成には、さまざまな活性化硫黄運搬タンパク質が関与し、反応性の高い硫黄原子を安全かつ確実に硫黄化酵素に伝達していくという概念を提唱している。今回新たに、好熱菌tRNAのs2T54硫黄修飾塩基の生合成に関与する新規タンパク質TtuDを逆遺伝学手法により同定した。試験管内で組換えタンパク質を用いて硫黄転移機構を生化学的に解析し、ペアスルフィド結合タンパク質TtuDの硫黄修飾塩基の生合成における役割をあきらかにした (FEBS Letters, 2016)。生合成の最初の段階ではシステイン脱硫酵素がペアスルフィドを生成する。TtuDはこの硫黄原子を受け取り、効率的にTtuBに伝達する。最終的にTtuBに結合した硫黄原子が硫黄化酵素TtuAによりRNAに導入される。 また共同研究により、tRNA-s2T54硫黄修飾塩基の生合成に関与するRNA硫黄化酵素複合体TtuA-TtuBの構造解析に成功した (Acta Crystallographica Section F, 2016)。TtuA-TtuBの立体構造情報に基づいて、酸素感受性という特徴をもつ新規硫黄化反応について解析を行った。無酸素下で生化学的に解析し、酸素感受性の鉄硫黄クラスターが硫黄化反応に必須であることをあきらかにした。また共同研究により、EPR分光法・補酵素を含む構造解析を行い、TtuAによる新規の硫黄転移機構を提唱した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規硫黄運搬タンパク質TtuDを同定し、その機能をあきらかにすることにより、細胞内硫黄化合物の生合成機構に共通する概念を提唱できた。またRNA硫黄化反応についても、とても難易度の高い無酸素条件下での解析法を確立することに成功し、立体構造に基づいて新規の反応機構を提唱することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には研究実施計画に沿って研究を遂行する。それに加えて、新規の反応機構の一般性についても解析を進めたい。また真核生物の硫黄化反応系についての研究実施も予定している。タンパク質の不安定性等により実施が困難な場合には、進化的に類似していると考えられる古細菌のタンパク質を用いて解析することも考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定より安価に試薬等を購入できたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後の研究の推進方策欄に記した研究内容に必要な研究費(実験試薬および消耗品)として使用する。
|