研究実績の概要 |
本研究では、まず、温度補正を取り入れた、質の高い、フォールディング速度データーベースの構築を行うとともに、Φ 値と蛋白質構造パラメータとの間の相関解析を機械学習アルゴリズム等を用いて行う。蛋白質フォールディングの臨界構造形成にとって重要な構造パラメータを抽出し、フォールディング分子機構の究極的解明を目指す。28年度の研究実績を以下に示す。
(1) 蛋白質フォールディングデータベースへの温度補正の導入:28年度までの基盤研究(C)「速度データの相関解析に基づく非二状態蛋白質のフォールディング機構研究」において,球状蛋白質のフォールディング速度に関するデータベースを構築した。このデータベース中の各蛋白質について,フォールディング実験における測定温度の調査を行った。その結果,12種の二状態蛋白質(PDB codes: 1APS, 1D6O, 1E0G, 1HDN, 2VH7, 3CI2, 1EHB, 1CSP, 1AVZ, 1SHG, 1HCD, 2JMC)と3種の非二状態蛋白質(2CRO, 1PGB, 1L63)については,フォールディング速度定数の温度依存性を表すEyringプロットが定量的に報告されていることが分かった。これらの結果から,二状態蛋白質と非二状態蛋白質の,それぞれについて,フォールディング速度定数の温度補正に必要な最適パラメータ値を求め,温度補正を取り入れた,改良されたフォールディング速度データベースを構築した。
(2) フォールディングの遷移状態に関わるΦ値解析のデータ収集:蛋白質フォールディング速度論に関する学術文献を調査し,Φ値解析のデータを収集した。既に,41種の二状態蛋白質と14種の非二状態蛋白質に関するデータを得ている。今後,これらをデータベース化すると共に,さらに多くのデータを収集する。
|