研究実績の概要 |
本研究では、まず、温度補正を取り入れた、質の高い、フォールディング速度データーベースの構築を行うとともに、Φ 値と蛋白質構造パラメータとの間の相関解析を機械学習アルゴリズム等を用いて行う。蛋白質フォールディングの臨界構造形成にとって重要な構造パラメータを抽出し、フォールディング分子機構の究極的解明を目指す。29年度の研究実績を以下に示す。
(1) αヘリックス型蛋白質のΦ値解析のデータ収集:現在,16種類のαヘリックス型二状態蛋白質(PDB codes: 1E41, 1IDY, 1IMQ, 1LMB, 1SS1, 1ST7, 1U4Q_R15, 1U4Q_R16, 1U4Q_R17, 1VII, 1W4E, 1W4J, 1YYJ, 2LLH, 2WQG, 2WXC)の計343個のΦ値データと5種類(PDB codes: 1AU7, 1AYI, 1ENH, 1NTI, 1UZC)の計117個のΦ値データを文献検索により収集した。
(2) Φ値と残基のヘリックス傾向との間の相関解析:上記で収集された各蛋白質のアミノ酸配列から,各蛋白質を構成するアミノ酸残基のヘリックス傾向(helical propensity)を求めた。ヘリックス傾向の算出には,ヘリックス-コイル転移のアルゴリズムに基づくAGADIR(http://agadir.crg.es/)を用いた。得られたヘリックス傾向値と上で収集されたΦ値との間の直線回帰を行い,相関係数(r)を求めた。得られた相関係数は,二状態蛋白質では r = 0.078,非二状態蛋白質では r = 0.061であり,いずれもほとんど相関は見られなかった。この結果は,ヘリックス傾向はαヘリックス型蛋白質のフォールディング遷移状態の安定化には寄与していないことを示唆している。
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