研究課題/領域番号 |
16K07314
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑島 邦博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (70091444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フォールディング / 速度論 / 遷移状態 |
研究実績の概要 |
本研究では,温度補正を取り入れた、フォールディング速度データーベースの構築を行うとともに,Φ 値と蛋白質構造パラメータとの間の相関を解析すし,フォールディング分子機構解明を目指す。H30年度の研究実績を以下に示す。
(1) 蛋白質フォールディングデータベースの改訂:温度補正を取り入れた,新しいフォールディング速度定数データベースをH28年度に作成した。その後,アンフォールディング速度定数,非二状態蛋白質の中間体形成の速度定数,Tanforのβ値などの新たなデータをデータベースに追加登録した。現在,データベースのエントリー数は,141(二状態蛋白質89,非二状態蛋白質52)であり,この成果は,データベースのURLとともに学術論文として公表した(Sci. Rep. (2019) 9: 1588)。
(2) αヘリックス型蛋白質のΦ値と立体構造特性との間の相関解析:16種のαヘリックス型二状態蛋白質を対象に,総数343箇所の変異導入残基について,残基のΦ値と立体構造特性との相関を解析した。立体構造特性としては,(i) AGADIRに基づくヘリックス傾向値を各蛋白質について0と1の間に規格化した値 (NHP),(ii) 相対溶媒接触表面積 (RSA),(iii) アミノ酸配列に沿って長距離の残基間の原子-原子接触密度 (LCD),(iv) 中距離の残基間原子-原子接触密度 (MCD),(v) 短距離の残基間原子-原子接触密度 (SCD),について調べた。その結果,NHPとRSAに対しては,相関係数r= 0.15~0.20,LCDに対してはr=-0.25となり,5つ全ての構造特性の線形結合を仮定した多重回帰分析の理論値とΦ値との相関はr=0.34であった。また,t検定のt値はt=6.57であり,Φ値はこれらの構造特性(特に,NHP, RSA, LCD)と有意に相関していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アンフォールディングの速度定数,中間体の形成速度定数,Tanforのβ値などの新たなデータをデータベースに追加登録する必要が生じたため,全体の進捗がやや遅れた。研究期間の一年延長を申請し,認められたので,今後αヘリックス型以外の蛋白質についても解析を進め,延長研究期間内に研究を完成したい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果では,αヘリックス型蛋白質のヘリックス傾向値(HP)とΦ値との間に有意の相関が見られなかった。しかし,HP値は蛋白質によって大きくばらつくため,各蛋白質毎に,値が0と1の間に収まるように規格化した値(NHP)を用いると,Φ値との相関係数はr=0.20となり,弱い相関が認められた。今後の研究の推進方策は以下の通りである。
(1) αヘリックス型以外の蛋白質も含め,ヘリックス傾向以外の構造特性(β構造形成能,ターン形成能,溶媒接触表面積,残基間コンタクト密度など)とΦ値との間の相関解析を行う。 (2) 本研究で調査された,すべての構造特性を対象として,機械学習の手法でΦ値との相関を調べ,蛋白質フォールディングの遷移状態の安定化に寄与する構造特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンフォールディングの速度定数,中間体の形成速度定数,Tanforのβ値などの新たなデータをデータベースに追加登録する必要が生じたため,全体の進捗がやや遅れた。研究期間の一年延長を申請し,認められたので,今後αヘリックス型以外の蛋白質についても解析を進め,延長研究期間内に研究を完成したい。次年度使用額が生じたのは,このためである。
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