研究課題/領域番号 |
16K07316
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
坂内 博子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (40332340)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | カルシウム / カルシウムイメージング / 遺伝子コード型カルシウムセンサー / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
細胞内カルシウムイオン(Ca2+)の増減「Ca2+シグナル」は、細胞の外界からの情報を適切な生理応答へと変換する役割を担う、普遍的な細胞内シグナルである。しかし、同じCa2+という伝達物質を用いて複数のメッセージを生命暗号としてコードし、多様な生理機能の誘導を可能にする機構については未解明の点が多い。我々は、「Local Ca2+センサー」を作成し、従来法では判別できなかったカルシウムシグナルの由来を特定し、Ca2+シグナルの多様性を記述するための新解析法を確立した。遺伝子コード型カルシウムセンサーを細胞膜直下に標的することで「カルシウム流入」を、ER膜に標的することでカルシウム放出をそれぞれ感度良く検出したところ、同じGCaMP6fをセンサーとして使っているにも関わらず,カルシウム流入センサーとカルシウム放出センサーは異なるパターンのカルシウムシグナルを示すことがわかった(Niwa et al. 2016)。この結果は、細胞内での異なる部位では異なるパターンのCa2+シグナルを持ちうることを示している。げっ歯類海馬アストロサイトにおいて自発的カルシウムシグナルイメージングを行ったところ、実はERからのカルシウム放出よりもカルシウム流入の方が多いことがわかった(Niwa et al. 2016)。このカルシウム流入はStore operated Ca2+ channel (SOCC)を介しておこっており、海馬アストロサイトではERが枯渇しない状態でもSOCCが恒常的に活性化され、ERのカルシウム量を一定に保つことに貢献していることが示された(Sakuragi et al. 2017)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、細胞局所のカルシウムシグナルを分離して取得する方法が確立され、2本の論文にまとめられたため、本研究は一定の成果を上げたと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度に開発したセンサーを実際に神経細胞に発現させ、カルシウムシグナルの多様性を記述する実験を行う。同一細胞で2カ所同時にCa2+シグナル測定できるようにするために、波長の異なるセンサー(RCaMP2バージョン)も作成する。作成したセンサーが目的の場所に標的され、かつCa2+シグナル感受性をもつことを、ラット海馬初代培養神経細胞に発現させることにより確認する。 (海馬培養神経細胞において、抑制性シナプス可塑性に直結するGABA作動性シナプスの安定化/不安定化を選択的に誘導するCa2+シグナルの時空間的パターンの定義を試みる。Local Ca2+センサーをラット海馬初代培養神経細胞に発現し、細胞膜、ERにおけるCa2+シグナルを、NMDA刺激及びmGluR刺激時に測定し、2つの条件下での細胞内4箇所のCa2+シグナルパターンをそれぞれ定義する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究連絡を緊密に行っているボルドー大学、パリ高等師範学校(フランス)を訪問する予定であったが、先方の都合で訪問ができなくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
訪問先の都合が良くなった段階で、研究連絡のために渡仏する。
|