研究課題/領域番号 |
16K07319
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今元 泰 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80263200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アレスチン / G蛋白質共役型受容体 / GPCR / 自己会合 / X線溶液散乱法 |
研究実績の概要 |
アレスチンはリン酸化したG蛋白質共役型受容体(GPCR)に結合し、その活性を停止させる調節蛋白質である。アレスチンのサブタイプによって受容体選択性やリン酸基特異性に大きな違いがあるが、受容体との結合に関与するアミノ酸残基や立体構造にサブタイプ間で大きな違いはなく、これらの単純な比較から選択性の違いを説明することはできていない。そこで本研究では、アレスチンの自己会合性がサブタイプ間で異なることに着目し、選択性の違いが自己会合性の違いに起因するのかを検証することを目的とする。 アレスチンは通常、受容体のリン酸化したC末端部と結合することで活性化(受容体との結合部位が露出)し、受容体と強固に結合する。アレスチンのC末端部が欠損したスプライスバリアントであるp44は、リン酸化したC末端部が結合しなくても活性化していることが知られている。そのため、その会合状態を調べることで、受容体結合能と自己会合性の関連を解析することができると期待される。そこで28年度には大腸菌を用いたp44の発現/精製系を確立し、X線散乱実験によって自己会合状態を解析することを試みたが、アグリゲーションが大きかったため、定量的な解析によって会合数などを求めることは困難であった。そこで29年度には、アグリゲーションの影響を受けにくい高角側のデータから情報を抽出することを試みた。また、明るい光環境で機能する錐体のアレスチンの反応を解析するため、ウシ錐体アレスチンを大腸菌で調製することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p44の自己会合をX線散乱解析しようとしたが、アグリゲーションによる散乱のため、小角側のデータを用いた定量的な解析は困難であった。そこで、高角側のデータから構造情報を抽出することを試みたところ、全長アレスチンと同様の4量体を形成していることが示唆された。 一方、ウシ由来の錐体アレスチンを大腸菌の発現系を用いて調製することを試みたが、桿体アレスチンやp44と同じ条件では解析に十分な量を得ることができなかった。これは錐体アレスチンが変性して不溶性となり、水溶性蛋白質として回収できなかったためであると考えられた。一般に、水溶性蛋白質が不溶性画分に含まれるのは、大腸菌の中でのフォールディングが追いついていないことが原因であると考えられる。そこで、培養温度を下げることで蛋白質合成を遅くしたところ、収量の大幅な増加が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
全長アレスチンがロドプシンと結合するためには、リン酸化していることと光活性化していることの両方が必要であるが、p44ではそのいずれか一方でよい。この性質を利用して、リン酸化C末端とアレスチンが結合しているが強固な結合は形成されていない状態(プレカップル状態)をとらえることを試みる。また、平衡論に基づいた解析を行い、ロドプシン/アレスチン相互作用を定量的に解析する。
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