アレスチンはリン酸化したG蛋白質共役型受容体(GPCR)に結合し、その活性を停止させる調節蛋白質である。アレスチンにはいくつかのサブタイプが知られているが、受容体との結合に関与するアミノ酸残基や立体構造の単純な比較からその違いを説明することはできていない。そこで本研究では、アレスチンの自己会合性の違いと機能の違いが関連するのかを検証することを目的とする。 アレスチンとロドプシンが結合するには、ロドプシンがリン酸化していることと光活性化していることの両方が必要であるが、アレスチンのC末端部が欠落したスプライスバリアントであるp44では、そのいずれか一方で結合するといわれている。暗順応状態の桿体細胞では、全長アレスチンは内節部に移動していると考えられており、暗順応状態ではp44が主に機能していると考えられている。そこで2018年度は、ロドプシンとp44の相互作用をX線溶液散乱法で定量的に解析し、全長アレスチンとの違いを検討した。 p44の自己会合の正確な解析はアグリゲーションのために困難であったが、アグリゲーションの影響を受けにくい高角側の散乱パターンを比較したところ、濃度依存的に4量体に特徴的な散乱パターンが観測された。また、従来の研究では、p44は光活性化した非リン酸化ロドプシンにも結合すると報告されていたが、今回の解析ではその結合は非常に弱いと考えられた。一方、ロドプシンがリン酸化していれば、光活性化しなくてもp44と結合することが示された。 リン酸化した暗状態ロドプシンとp44の複合体を光照射すると、慣性半径の有意な減少が見られた。これは、不安定なプレカップル状態から強固な結合状態への移行が実験的に観測されたものと考えられた。今後は、この測定系を錐体型アレスチンやβアレスチンにも拡張することで、多様化したアレスチンの機能の違いを考察できると期待される。
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