研究課題/領域番号 |
16K07321
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山元 淳平 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (90571084)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酵素機能解析 / DNA修復 / DNA認識 / 電子移動 |
研究実績の概要 |
前年度にクローニングしたミツバチ由来クリプトクロムの大腸菌を用いたタンパク質調製を試みた。種々の条件でタンパク質調製を試みたが組換えタンパク質として得ることはできなかった。現在、昆虫細胞を用いた発現系の構築を行っている。 一方、(6-4)光回復酵素による光依存的DNA修復の前段階として、光活性化による修復活性種の生成およびDNA認識が重要である。当該年度は、申請者らが発見した動物型(6-4)光回復酵素の光活性化過程に関与するトリプトファン4連子の機能解析を行った。その結果、4連子の遠位トリプトファンを持たない変異型タンパク質では、(i) in vivoでのDNA修復能が欠失すること、(ii) 光活性化反応速度が大幅に低下することが明らかになった。また、共同研究による(6-4)光回復酵素の光活性化素反応解析の結果、励起状態のFADが近傍のトリプトファン側鎖から電子を0.5ピコ秒以内に得た後、トリプトファン上に生じた正孔はトリプトファン4連子中に非局在化し、50ピコ秒後には遠位トリプトファン上に局在化することが明らかとなった。 また、DNA認識において重要であると考えられたアミノ酸側鎖を変異させたところ、DNA修復能および結合能の大幅な低下が観測された。種々の合成DNAを用いた結合解析および共同研究による計算科学研究から、このアミノ酸側鎖とDNAとの間で、静電相互作用およびCH-pi相互作用が働いており、これらのいずれかがないとDNAを正しく認識できないことが明らかとなった。また、このアミノ酸側鎖はクリプトクロムでは別のアミノ酸へと置換されており、クリプトクロム型の変異体を調製しDNA結合解析を行ったところ、DNAへの特異的な結合能が失われた。このことから、光回復酵素とクリプトクロムの機能転換の一因となっているものと考えられた。上述の研究は現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(6-4)光回復酵素による光活性化の素反応およびDNA認識における重要な相互作用の解明には大きな貢献を及ぼした。本申請研究にて提唱した光反応の素反応解析以外の方法でクリプトクロムと光回復酵素の機能分化の一因を明らかにした点は、予定と異なっているが評価に値すると考えている。一方で、上記の研究に注力した結果、DNA修復反応における素反応解析はあまり進んでいない。また、ミツバチ由来のクリプトクロムの遺伝子組換えタンパク質の調製も予定どおりに進行せず、申請研究としてはやや遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
ミツバチ由来クリプトクロムを昆虫細胞発現用ベクターへとサブクローニングし、昆虫由来培養細胞を用いたタンパク質調製を試みる。タンパク質調製が成功した場合、まずはフラビンの結合能について評価する。 また、DNA修復反応における素反応解析においては、変異型タンパク質を用いた研究を進めつつ、まずは野生型で得られた結果について論文発表を行う。
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